モーニング娘。「ふくむらみず期」と12期についてのお話
みなさん、お久しぶりです。
今回はいわゆる現在のモーニング娘。「ふくむらみず期」について語りたいと思います。
今のモーニング娘。は23年の歴史の上にあり、
様々な角度から語る切り口があるでしょう。
今回は「ふくむらみず期」を語るにあたり
「'14」「12期」そして「譜久村聖リーダー」という3つの要素を中心に語りたいと思います。
私の主観による推論も多々あります。
そしてめちゃくちゃ長いです。
そのあたりはご理解の上、お暇な方は読んでいただければ幸いです。
まず「ふくむみず期」を語る上でその前段階にして完成形だった「モーニング娘。'14」を語らないわけにはいきません。そこから話を始めたいと思います。
モーニング娘。'14という到達点
プラチナ期からカラフル期へ
今モーニング娘。のファンである皆さんは当然「’14」をご存知でしょう。
だけど意外と、当時はまだファンじゃなくて、その空気をリアルタイムで味わっていなかったという方も多いかもしれません。
そこでモーニング娘。’14がどんなチームだったのか、どうしてあれだけ完成された半ば伝説的なチームになりえたのか
私の主観をたっぷり交えながら、少しだけ解説したいと思います。
2011年、プラチナ期が終わり9期10期という若いメンバーが大量加入した時
それまでのモーニングを支えていたファンは大いに盛り上がりました。子供たちを愛で、成長を楽しみ、モーニング娘。の将来像に想いを馳せました。
個性豊かな子供たちと、すっかりお姉さんへと成長したプラチナメンバーとで作られるグループは幸福感に溢れ、それはちょうど
2020年現在の15期を迎え入れたグループの雰囲気と似ていました。
一方でその頃から始まった先輩メンバーの卒業ラッシュ。
高橋愛、新垣里沙の5期メンバーが卒業し、将来のリーダー候補だった光井さんも無念の卒業となりました。
2012年には先輩メンバーが道重、田中という僅か2人に。後のメンバーは全員が2年以内の新人というグループ構成となりました。
ファンにとってはその体制でも十分グループは魅力的で、応援し甲斐のあるチームだったのですが
一方で大きな懸念がありました。
それは世間との隔絶です。
当時モーニング娘。といえば「LOVEマシーン」で一時代を築いた過去のアイドルグループ、という印象を抱かれていて
現在も活動しているという事実すら知らない人が多いほど世間との温度差に悩まされていました。
それでもテレビに出れば「モーニング娘。だ」とわかるギリギリの世代、5期や6期が次々と卒業していくことに
とてつもない危機感を抱いていた時期でした。
それはメンバー、事務所、ファンが共通して持っていた危機感だったと思います。
ファンも、今のグループが魅力的であるほど、それが世間に認められないことに歯がゆさがありました。
そしてもう一つの懸念は「パフォーマンス力」の著しい低下でした。
「プラチナ期」が後にパフォーマンスの到達点として再評価されていたこと、そして
アイドル戦国時代と言われていた当時、そのパフォーマンス力の高さをもって存在を示していたモーニング娘。が
新人ばかりのグループになってその特色すら失われてしまう。
新垣さん、光井さんの卒業から僅か4か月後に田中れいなさんの卒業が発表されるに至り
まだ中高生だった9期、10期の子供たちや加入直後のスーパールーキー小田さくらですら危機感と焦燥感を露わにしています。
「モーニング娘。14'」はそんな流れの中で生まれた「一丸」のチームであり
「8代目リーダー道重さゆみ」の存在により築き上げられた最高のチームでした。
伝説のリーダー道重さゆみ
リーダー就任当時道重さんは、圧倒的な「一般知名度」を誇っていました。
しかしそれは「黄金期の残り香」としてではなく、彼女自身の自己プロデュースによるバラエティ出演の賜物でした。
自信に多大なストレスをかけてまで貫いた毒舌ナルシストキャラで「嫌いな女ランキング」に名を連ねるまでになった道重さんは、
そうして得たものを全て「自分を育ててくれたモーニング娘。への恩返し」として還元します。
共に歩んだ仲間たちを見送りながら、モーニング娘。を未来へと繋ぐための種まきと育苗を愛情を込めて行っていくのです。
道重さんは黄金期の最後の寵児であり、黄金期と過去のモーニング娘。を超えることを掲げました。
「黄金期の残り香」としてでは無い道重さんの知名度は後輩たちに大きな指針を示し、過去のモーニング娘。とは別の
新たなモーニング娘。像を作りあげることへの期待感を膨らませました。
時を同じくしてもう一人の「主人公」鞘師里保の存在に触発されたつんくさんや制作陣も
グループの方向性や楽曲の質を転換させ、大きな勝負に打って出ました。
事務所もまた、この時をチャンスとみてそれまで禁忌とさえ目されていた個別握手会の解禁や
大手広告代理店との再契約という大勝負にでました。
それは「黄金期の残り香」が完全に消えた後、モーニング娘。は存在できるのか
という瀬戸際であり、期待感と緊張感が隣り合わせの濃密な時間。
道重さんは黄金期を超え再びグループの隆盛を取り戻すことを常に標榜していました。
プラチナ期にはその想いゆえに、黄金期を支えたOGに対し敵視するそぶりをみせたことさえありました。
だけどリーダー就任以後、感謝とグループへの愛を強めた彼女は
必要なことは「過去との断絶」では無く「継承」と「更新」であると気付きます。
現在も譜久村リーダーが引き継いで行っている、事務所に所属していて連絡が可能なOG全員に、リリースごとに連絡を入れCDを渡す
ということは道重リーダーが自分で考え、始めたことです。
彼女の、過去への敬意と感謝の上に初めてグループの未来があるという姿勢もまた多くのファン関係者に支持されました。
道重さゆみと9人の子供たち
道重さんはパフォーマンスでグループを牽引するタイプのリーダーではありませんでした。
しかし結果としてそのことは後輩たちのパフォーマンススキルを飛躍的に成長させることに繋がります。
当時はそれでも歌が苦手と自称する道重さんが多くのソロパートを担い、ユニゾンではリズムを支え、
殆どの楽曲でコーラスレコーディングも担当していました。
道重さんの負担を少しでも軽くしたいという想いか、一ツアーごとの9期10期11期のパフォーマンスは見違えるほどに成長しています。
モーニング娘。’14のグループの方向性は
強く意識していた「黄金期」と、その直前の時代で多くのエッセンスを継承していた「プラチナ期」の両方に色濃く影響されていました。
つまり「プラチナ期」のパフォーマンス力を目指し、「黄金期」の華やかさを目指すという最高のハイブリット。
歴史あるグルーならではの「いいとこどり」です。
道重リーダーのグループへの愛、グループの未来へのビジョンと献身的姿は
年若い9期10期11期達の絶対的な模範となりました。
道重さんの方針、指針に従えば絶対に間違い無いという安心感。
それは9人の子供たちをのびのびと成長させる場を生み出し、またかつてないほどの意思統一が行われました。
2つの意見があった場合に、正しいのは「道重さんの考え」であり
二人が共に「道重さんならどう考えるか」を無意識に選択することで、自然と答えは一致する。
当時子供たちは「家族よりも分かり合える」「お互いの考えが何でもわかる」といったことを無邪気に語っていますが
そのテレパシーのような意思の共有は「道重さゆみ」という絶対的指針があることによって成り立っていました。
そうして完成した「モーニング娘。’14」は10人全員が完全に同じ方向を向いたグループであり
モーニング娘。の再興という目標に向かって高いモチベーションと闘志を持ったグループでした。
またファンやメディアの盛り上がりも合さって確かな手応えも生まれていました。
一致団結した「’14」はかつてないほどに纏まり、大家族と形容するにふさわしい空間を生み出しました。
ファンは大いに幸福を感じ、メンバーもとても幸せそうで、いつまでも続けばいいと思える「過去最高のモーニング娘。」が完成したのです。
道重さゆみの卒業
'14という年の大半は「道重さゆみが卒業を控えている」状態でした。
4月末に卒業が発表されてからの半年間、子供たちは少しでも道重さんが安心して卒業できるようにとさらに団結し
また子供がミルクを取り合うように道重さんの愛情を享受しました。
限られた時間とわかっているからこそ、1分1秒を濃密なものにしようというメンバーの意識は
ファンにも大いに伝わって、「かつてないほどの幸福感」はよりいっそう膨らんでいました。
そして横浜アリーナ公演。
もはやこれについて多く語る必要は無いかと思います。
道重さんのアクシデントとそこで示された後輩たちの成長、モーニング娘。の未来を照らし
道重さんの4329日を祝福する、まさに神様が筋書を記したと思えるような伝説の公演によって一つの時代の幕が下ろされました。
この時全てのファンが余韻に浸り、モーニング娘。には明るい未来しかないと信じて疑いませんでした。
一種の信仰すら生みかねないほど、この「モーニング娘。'14」の物語は完璧でした。
しかしこの信仰と「’14の呪縛」は後のモーニング娘。を大いに苦しめることになるのです。
受難の譜久村体制
'14 という幻影
横浜アリーナ公演終了後、グループは12期メンバーを加えた新編成として新たなスタートを切りました。
しかし、あまりにも感動的で印象的だった横浜アリーナの残り香はいつまでもふわふわと漂っていて
誰もが長い間、あの夢の続きの中にいるような浮遊感に襲われていたように思います。
あまりにも完成されすぎていた「'14」はいつまでもメンバー、ファンの脳裏に焼き付いていました。
そして誰もが次のモーニング娘。も、新たに12期を加えて「'14を再現」するべきだと、
'14を目指したグループ作りをしていくべきだと思っていたのではないでしょうか。
前項で私は'14が一つにまとまった理由を「道重さゆみという絶対的指針があったから」だと言いました。
しかし'15になったとき、そのことに気付いていたメンバーは誰一人としていなかったように感じます。
つまり12期以外の9人は、「私たちは去年なんでも共有できた。家族のように、言葉も要らないほどに」という
意識があって、どういう構造の上にそれが成り立っていたかということまでに思い至っていなかった。
だから意思統一に必要だった「絶対的指針」が無くなっていたことに気付いていなかったのです。
'15以降メンバーたちは、語るビジョンやグループの指針がバラバラな内容であることが増えました。
「スキルを磨かなければ」「個々でアピールできる仕事を」「グループの纏まりを」
それぞれが考えた上で大切なことは間違い無いながら、メンバーが完全に同じ方向を向いていた'14とは明らかに
違う雰囲気が醸し出されていました。
「去年は何もしなくても全員と意識を共有できたのに、今は何故かみんなの考えががわからない」
そんな焦燥をなんとなく当時のメンバーから感じ取っていた人もいたかもしれません。
それもそのはずで'14でメンバーが向いていた方向は道重リーダーが向いていた方向だったのです。
譜久村新リーダーのジレンマ
9代目譜久村リーダーは、絶対に道重さゆみにはなれませんでした。
それは当たり前の話で、キャリア年齢ともに圧倒的なカリスマ道重さゆみと、ほぼ同期同年代の9人という構図だからこそ
出来上がっていた絶対的意思統一機関としてのリーダー像。
それは構造の問題であって、今まで横並びだった9人の中でリーダーに就任した途端
絶対的な主導権を握ることなど出来るわけはありません。
譜久村さんは当事者として、おそらくリーダーに就任する前から
道重さんの卒業後に「'14」を再現することは不可能だと肌で感じていたと思います。
'14とは全く違うモーニング娘。を、またゼロから作っていかなければならないと。
それは彼女のリーダー就任の挨拶の中からも読み取れます。
「道重さんのように背中で語ることは出来ませんが、みんなで頑張っていくことは出来ると思うので」
また「高橋さん、新垣さん、光井さん、田中さん、そして道重さんに教わったことは誰よりも自信があります」
と、偉大な道重さんからの継承、というよりはそれ以前からのモーニング娘。としての継承をを語っています。
譜久村さんは早くから「'14の再現が不可能」だと気付いていた為に、孤独な闘いを強いられることになります。
'15発足当時はファンもメンバーもそして事務所関係者すら「'14」の夢の中に居ました。
ファンの間では「さゆロス」という言葉が流行し、誰もが道重さゆみの面影を追い続けていたのです。
メンバーにもその雰囲気はあって、例えば道重さんと連絡をとった、近況はどうだという話が出ると一斉にファンが群がりました。
特に道重さんを慕っていたメンバーのうち、飯窪さんや石田さんなどは積極的に道重さんのエピソードを披露し、また自信も「さゆロス」であることを語っていました。
一方譜久村リーダーは、そんな「14'ロス」の空気が支配する中にあって、求められた場合以外に殆ど道重さんの名前を口にすることはありませんでした。
有名な「フクムラダッシュ」について譜久村さんは「高橋愛さんならこういう時にどうするかを考えた」と語っています。
このエピソードは「道重さんならどうするかを考えた」とすれば「完璧な美談」でした。
実際譜久村さんが事実をそのまま口にしたのか、あえて(臨機応変なプラチナメンという意味で高橋さんの名前でも道重さんの名前でも、意味は大きく変わらない)高橋さんと言ったのかは分りません。
だけど私は後者だと感じています。
新たなグループを作る上で'14の中だけで話を完結させてはいけない。もっと大きな流れの中にモーニング娘。の歴史があり
'14という時代があり、次の時代が始まるのだというささやかな意思表示があったと思えるのです。
そんな「脱'14」を胸にリーダーとして立つ譜久村さんに対して
「'14の夢現」の中にいるファンからの風当りはいつしか強まっていました。
当時は絶対的に「道重さゆみ」の名を口にするメンバーの評価が上がり、あえてその名を出さず高橋さんや他のOGの名を出し
'14の話題を避ける譜久村さんを、まるで「敵」として扱うファンさえいました。
譜久村さん自身、サブリーダーとして隣で見てきたリーダーとしての道重さんの姿に受けた影響は図りしれないでしょう。
後のリーダー譜久村聖を見ていけば道重さんへの想い、影響と敬意の大きさは計り知れません。間違いなく最も特別なリーダーだと感じさせられます。
だからこそそこから脱しなければならない、そしれそのことでまるでファンを「敵」に回すような構図になってしまっていたこと。
彼女がどれだけのジレンマに苛まれたかは想像だにできません。
また、メンバー同士ならばそのことを共有できるかといえば、そうでは無かったことも彼女を悩ませたでしょう。
譜久村さんも「'14の意思統一」が「絶対者」の存在に依っていたことをロジカルには理解していなかったようで
どうすればもう一度みんなの意思を纏めることが出来るのか分らないようでした。
彼女もまたこの時キャリア4年弱、若干18歳の少女だったのです。
'14から'15への変化は、いうなれば絶対王政から共和制への移行ほどの変化で
そこで必要なのは徹底的な意見交換、ディベートによる意思疎通だったのですが、なかなかそれに気付けぬまま'15はスタートしてしまいました。
12期の悲劇
一見順風満帆のような'14から'15への移行。
その実すべてがガラリと変わる激流の中、ぽっと放り込まれた12期はみごとにその激流に翻弄されてしまいます。
先輩たちの12期への接し方はバラバラで、'14の延長線上で「家族の輪」にいれようとするメンバー、「’14」を経験した9人とはきっちり分けて「後輩」として接しようとするメンバーなど様々でした。
12期4人はそんなバラバラの接し方をされるなか、自分たちの立場を決めかね、どう振る舞うのが正解か分らないまま在籍することになりました。
12期の新人感が抜けない、お客様感が抜けないなどと、加入してかなり時間が経ってからも言われ続けたのは
先輩たちがどう12期と接するかという意思統一がされていなかったことが最大の原因だと思います。
また、スタッフも当時「'14」の夢現の中にいたような節があって
9期に10期や11期が勝手に馴染んでいったように、12期も勝手に馴染むだろうという感覚でいたように思います。
新人として12期を大きくフィーチャーすることが無く、つんくさんがプロデューサーから離れたこともあって
デビュー曲ですら殆ど見せ場を貰えないという不遇な扱いを受けることとなります。
「マジでスカスカ」「ピョコピョコウルトラ」「help me!!」各期のデビュー曲と比べて「青春小僧が泣いている」での12期の扱いはどうでしょう。
明らかに11期までと12期では世代の隔絶があるのに、それを誰も強調しようとしなかった為に12期の存在意義はずっと不安定なままでした。
12期が上の世代までと隔絶された扱いを受けられるようになるまでには13期、14期の加入を待たなければなりませんでした。
それまでの長期間、12期はグループ内での立場が定まっていなかったといえるのです。
先輩たちの意思統一が出来ていないことによってグループの居場所が確立出来なかった12期。
しかし先輩たちは個々としては12期に大きな愛情を注いで接していました。
何とかそれぞれの良さを出してあげよう、成長を促そうと奮闘していたことはありありと分ります。
枠組みと想いが噛みあわないジレンマの中でも12期4人は何とか食らいついていけたのは、ひとえに先輩たちの愛情のおかげなのでは、と思えるほどに。
特に9期は12期に、自分たちのような想いをさせたくないという意識が強かったようで
あまり追い込まず、根気強く見守りながら育てたいと思っていたようです。
12期は不遇の中でも沢山の愛情を受けて、花開くときを長く地中で待つ、そんな期となりました。
'14の崩壊と「ふくむらみず期」始動
エースの決断
前述の通り'14の残り香と夢現の中始まった譜久村リーダー時代は
青天の霹靂によって一気に急場を迎えることとなります。
それが絶対的エース鞘師里保の卒業です。
鞘師さんの卒業はとてつもなくファンを震撼させた出来事で、1年前の14'時代の幸福感が嘘のような絶望感、終幕感をハロプロ界隈に齎しました。
今もって彼女の卒業理由には様々な憶測が飛びかい、また精神面でも大きな辛さを抱えていたらしいことは様々な断片から読み取れました。
本人の口から語られた卒業理由、またたてられた様々な憶測、そのどれも少なからず彼女の決断の理由だったのだと思います。
ただ案外語られていないのは彼女がグループに対してどう思っていたのか、
自身が卒業した後のモーニング娘。についてどう考えていたのか、です。
'15最初の「gradation」ツアーを終えて、後輩たちの成長を感じもう大丈夫だと思った、と鞘師さんは言いました。
だけどファンから見て、正直何が大丈夫なのかは全く分りませんでした。誰の成長を感じたのかも。
ここからはかなり個人の憶測が含まれるのですが、私は鞘師さんもまた譜久村リーダーと同じジレンマに苛まれていたのではないかと考えています。
つまり絶対的エースとしてグループの重責を担ううちに「'14」の再現は不可能で、新たなモーニング娘。を築かなければならないことを、肌で感じていたのではないでしょうか。
'14を語る項ではその名前を殆ど出しませんでしたが、私は'14或いは「カラフル期」という時代は
「道重・鞘師期」であったと思っています。
絶対的リーダー道重さゆみと絶対的エース鞘師里保の両輪によって作り上げられたグループの安心感、安定感こそがその本懐であったと。
だからこそ、譜久村さん同様、鞘師さんもまたすぐに'14の再現が不可能だとわかったのではないでしょうか。
後に譜久村リーダーは鞘師の卒業について、「悔しかった」「まだまだ一緒にやりたいことがあった」と語っていますが
このあたりにも大いに含意がありそうです。
つまり当時リーダーとエースは同じ想いを共有していた。「'14とは全く違う新しいモーニング娘。を作らなければならない」
そのために譜久村リーダーは鞘師さんと二人三脚で模索していきたかったはずです。
しかし結局鞘師さんは同じ想いを共有していながら別の結論を出してしまったのです。つまり
「自分がいたら新しいモーニング娘。は作れない」と。
譜久村リーダーの「悔しさ」と「後悔」は、そう結論付けてしまったエースに対し「そんなことない」と強く言えなかったことにあるのではないでしょうか。
譜久村さん自身にも迷いとジレンマがある中、結論を出し次なる夢への意思を固めている鞘師さんを引き留める言葉を、当時の彼女は持っていなかった。
そして涙を飲み込んで、譜久村さんは鞘師さんを送り出すことになりました。
新たな時代
奇しくも鞘師さんの卒業によって「'14の再現」が不可能であることを内外がはっきりと知覚することとなりました。
ファンが夢現の中思い描いていたどの未来像にも、その中心に鞘師里保の姿があったはずです。
それが永遠に叶わなくなったことは、冷や水を浴びせかけられるように「'14」の夢からみんなの目を覚まさせました。
その「現実」に、中にはモーニング娘。から離れて行くファンも多くいたほどで混乱の渦は広がりました。
事務所もまた当事者でありながらファンと同じように混乱の渦中にあったことは
次のツアー、図らずも鈴木香音さんの卒業ツアーとなった「emotion in motion」で顕著でした。
ツアー自体は各メンバーの成長や、鈴木香音さんの卒業による感動的なものでした。
だけどその割り振りは、鞘師さんの卒業が事務所の意図を超えていたことを如実に感じさせました。
鞘師さんが持っていた大量の歌割はこのツアーでは殆どが譜久村さん、小田さんの二人にスライドし
「エースの離脱の危機を逆にチャンスに」というような抜擢やチャレンジは殆どありませんでした。
それまで主に歌っていた「鞘師・譜久村・小田」が「譜久村・小田」になったということに、単純に「真ん中が欠けた」感すら出ていました。
それだけ鞘師さんの卒業が急で、事務所にその後の方針を練る暇が無かったことを示しています。
そんなツアーをある意味では鈴木香音さんの力を借りる形で乗り切ったあと
本当の意味で鞘師里保の卒業と’14の再現の不可能性を受け入れ、メンバー、事務所、ファンが「'14」とは違う新たなモーニング娘。像を見出したのが
2016年秋「My vision」のツアーなのではないでしょうか。
「ふくむらみず期」がいつからという定義は無く、その名前が表す通り譜久村リーダー体制開始からを指す場合が殆どでしょうが
私はこの「My vision」ツアーこそが「ふくむらみず期」のスタートだと思っています。
「道重・鞘師時代」の終焉をみんなが受け入れ、新しいモーニング娘。像を模索する。
譜久村リーダーが就任直後から思い描き、本当なら鞘師と共に始めたかった新たな時代「ふくむらみず期」がようやく産声を上げたのです。
このツアーでは事務所もバラードからの始まりや、先輩メンバー全員のソロ曲披露など新たな可能性を模索したチャレンジが随所に見られます。
また鞘師の代わりにエースを擁立する、いわゆる「絶対エース」の元に纏まるシステムとは別のグループ像を模索し始めています。
当時のモーニング娘。にとって「エース不在」は重大な問題でした。しかし現在に至っても「絶対的エース」は不在ですが、もはや誰もそんなことを気にしなくなっています。
それぞれが個々の能力を最大限に発揮し、誰がセンターにきても輝ける、そんなグループになっているからです。
そしてこの「My vision」ツアー千秋楽日本武道館公演の場で13期メンバー加賀楓、横山玲奈の名が叫ばれるに至り
今までとは全く違うモーニング娘。の未来像がファンの脳裏に舞い降りたのではないでしょうか。
この時をもってようやく'14は過去の輝かしい「思い出」となった気がします。
そして'14が「思い出」となったとき、黄金期の最後の寵児でもあった道重さゆみを乗り越えたこと、真の意味で「黄金期」の残り香が消えた後もモーニング娘。が存続しえた、その第一歩となったのではないでしょうか。
新しいモーニング娘。像
ようやくメンバー、事務所、ファンが同じ方向を向き始めたこの時から「ふくむらみず期」の快進撃は始まります。
譜久村リーダーはここからイキイキとメンバーの個性とグループの特性を活かす方針を示し、愛をもってグループを包み込んでいきました。
今や伝説的に語られる'17「inspiration」ツアーのマッシュアップメドレーも、「カラフルキャラクター」ツアーのメドレーをもとに
メンバーが希望して生まれたことが後年になって語られました。
その後、メンバーの卒業という決断や、森戸さんの電撃加入といった様々な場面でも
グループの軸が大きくぶれることは無く、それぞれのメンバーが自身の役割を全うし、グループへの愛を貫きながら前に進んでいました。
譜久村リーダーはそれらの全てを大きな愛で包み受け入れて、一つ一つ丁寧にグループの歴史として、意味として積み重ねていきました。
道重さゆみ・鞘師里保という絶対的な「主役」が居た頃では出来なかった、「誰もが主役になる場面がある」ということが
メンバー個々の意識の向上と責任感を増幅させました。それは「ふくむらみず期」の大きな特色なのではないでしょうか。
15期メンバーはそんな「ふくむらみず期」が円熟し、確立されたなか加入しました。
メンバーも待ち望んだ「新メンバー」の加入。
ご存知の通り、逸材揃いかつ可愛くフレッシュな15期にメロメロな先輩メンバーという構図が新たな幸福感を産み、'14に比肩するような
「雰囲気のいいチーム」が完成しつつあります。
15期を迎え入れるにあたっての様々なエピソードの中で私が特に注目したのは、15期の指導方法です。
先輩が一丸となっている中にポンと後輩が入る、そういう意味で今回も12期加入時と似た構図でした。
しかし今回は12期加入当時とは全く違う方法がとられています。
初ツアーまでの15期集中育成期間、15期以外の先輩11人のグループラインが形成され、常にその教育方針が共有されていたというのです。
主に教育係の13期が指導する中でも「今日はどんなことを伝えたか」を先輩たちに共有し、他のメンバーが違うことを言って15期が混乱しないよう徹底する。
また15期がそれぞれどんな壁にぶつかっているか、悩んでいるかということも先輩全員で共有しそれに対するアドバイスも皆で考えるといったことも行っていたようです。
こういった先輩たちの徹底した意思疎通と教育方針の確認は
15期に多大な安心感と信頼を与えてくれます。誰に聞いてもちゃんと「モーニング娘。の先輩」としての意思が返答として返ってくる安心感は
15期が成長する上でとても大きな意味を持つでしょう。
これは12期加入当初先輩メンバーが出来なかったことです。
12期加入当時に出来なかったこと、してあげられなかったことの反省が15期の為に大いに役立ったこと。
実はモーニング娘。の大きな強みの一つはこの点にある気がするのです。
つまり長い歴史の中で過去の反省を次に生かせること。
たとえば9期加入時すぐに単独コンサートのリハーサルに向かうという地獄を味わい、半ばトラウマになるほどにズタボロにされた反省から
それ以後加入の期は全て先にハロコンのステージに立ってから単独コンサートに臨むという形になりました。
このように15期は、3人の資質、ポテンシャルもさることながら
過去の育成経験の集大成としてシステム面できちんと育てるノウハウが確立されていました。
また積もり積もった愛情を目一杯注がれているので、ファンも安心して彼女たちの成長を見守ることが出来ているのです。
一方加入当初システムとしての経験不足の煽りをうけた12期が今、ようやく明確な後輩たちを得て新たな魅力を花開かせようとしています。
彼女たちは決して自身の不遇を呪うことなく、むしろそんな環境の中でも愛を注ぎ続けてくれた先輩たちへの感謝を滾らせ
グループへの愛とグループの未来への野心を燃やしています。
「ふくむらみず期」の命名者は12期、羽賀朱音。
譜久村リーダーを始めとした9期10期11期もまた、高橋愛が「9期は特別」と言うのと同じように12期を「特別」な後輩と見ているようです。
それは彼女たちが加入した時自分たちが未熟だったゆえにベストを尽くせなかった忸怩たる想いもあるのかもしれません。
しかしひたすら愛の大きさによってのみ育てられた12期は、これからのモーニング娘。の「愛」を担い未来を担う。
そんな気がしてならないのです。
また、'14の呪縛と戦い耐え抜いて新たな時代を築き上げた譜久村リーダーを、
その強さと優しさを最も肌で感じたのもまた12期なのではないでしょうか。
これからまた先輩メンバーの卒業が始まるかもしれません。
そんな折、私たちファンが今を惜しむあまり意固地にならず、変化を受け入れることは彼女たちの助けになるはずです。
あれだけ黄金期と比較されることに辟易した「'14」時代のファンが
譜久村リーダー体制以後「'14時代は良かった」などと言い放ってしまっていたのも因果なこと。
'14は最高でした。そして「ふくむらみず期」はそれに勝るとも劣らないくらいに最高です。
であるならば次の時代のモーニング娘。が全く違う姿だったとしても十分に「最高」になりえるのですから。
だけど少しでも長く「ふくむらみず期」を見守っていたいと思うのも、ファンならば仕方のないこと、ですよね。
ハロプロ・モーニング娘。の凄さとは「佐藤優樹がいる」ことである話
こんにちは。
今回はカプヲタ視点を排して、私が個人的にハロプロに感じている「凄さ」を語ってみようと思います。
佐藤優樹さんの魅力については、熱く100時間でも語れる多くの諸先輩方がいらっしゃるかと
思いますので、あえてここで掘り下げることは致しません。
ざっくり紹介すると、佐藤優樹さんはモーニング娘。の10期メンバーで現在20歳。
50人以上所属する現在のハロプロにおいて、数多くの指標で「人気ナンバー1」とも言われているメンバーです。
独特なアレンジや個性的な表現でステージを支配する圧倒的なカリスマ性と、私生活での不思議な言語感覚
独特の思考やセンスとのギャップは目に留めた人を一瞬で虜にする吸引力を持っています。
超・問題児
そんな佐藤さんが加入した当初から圧倒的カリスマ性を放つ風雲児であったかというと違います。
むしろ12歳でモーニング娘。に加入した彼女は当時、全く違う印象を持って周囲に受け止められていました。
均整のとれた美しい容姿を持っていたものの、完全に「子供」だった彼女は
普通の子供とも一線を画す(モーニング娘。的に)ド級の問題児でした。
同年代の子供に比べて常識的と思われることの殆どが通じない、知らない。
日本語が苦手で漢字が読めず、平仮名とカタカナの書き分けも不得手。
集団行動や社会生活で必要となる「我慢」のあれこれが身についておらず
奔放でつねに独特の感性や感覚によって行動する彼女は
なかなかに手に負えない女の子でした。
加入当初から「不思議ちゃん」を超えた不思議ちゃんエピソードは枚挙に暇が無く
OGの石川梨華さんは「往年の辻加護を超える問題児」と評しています。
そんな佐藤さんのファンからの評価はやはり「奇抜で面白い不思議ちゃん」で
過去に類を見ないそのキャラクターを面白がり、また素直すぎる子供らしさを愛でていました。
まーちゃんを「特別扱い」するということ
しかし実際に現場で関わっていた大人たちやメンバーの苦労は絶えないようでした。
もちろん本人も幼くして全く未知の環境に放り込まれ、同じ立場であるはずの同期ですら
「向こう側」の常識を共有しているという状況下での苦労は並大抵のことでは無かったでしょう。
孤独も理不尽さも戸惑いも大いに感じながらの活動であったことは容易に想像できます。
加入間もない頃、彼女を選出した張本人であるつんく♂さんが
とある番組にて数名の先輩メンバーにこんなことを言っています。
「(佐藤は)不思議ちゃんなんです。別格扱いしたってください」
これに対してスタジオでは「ずるい」という声が響きます。
この時の状況は当時はファンも気楽に受け止めていましたが
今から考えれば佐藤さんの未来を象る上で非常に大切な局面だったように思います。
10代の女の子、あるいは男の子の集団の中で
コミュニケーションにおけるズレが常にあり、トラブルメイカーとなっている佐藤さんを
「特別扱いしろ」と大人から言われて、素直にその通りして仲良くできるものでしょうか?
しかし結果として佐藤さんは「特別扱い」を受けながら後にカリスマへと成る道を歩むことになります。関係する大人たちは根気強く様々なことを彼女に教え、叱り、時に褒めてじっくりと成長を促しました。
メンバーや、特に同期の3人は時に衝突を繰り返しながら、忍耐強く佐藤さんと向き合い続けます。
佐藤さんの「特別扱い」は、例えば台本の漢字に振り仮名を振ってもらうといった実際的なことの他にも、心理的に「佐藤だから仕方ない」といった一人だけハードルの高さが違うという部分に大きかったように思います。
それは他のメンバー、特に同期3人にとっては大きなストレス、嫉妬の対象だったのでは無いでしょうか。
自分は当たり前にすべきことをしっかりやっている、それなのにそれが出来ていないまーちゃんが、他のちょっとしたことでちやほやされるという構図は10代の少年少女にとってどんな受け止められ方をするものか。
それでもメンバーも同期も、佐藤さんを「特別扱い」しながら根気強く育てるのです。
もちろん前述の嫌な部分以上に佐藤さんの素直な優しさや鋭敏な感性、瑞々しい感覚が愛されうるに足るものだったことも大きいでしょう。
また絶対的な「父」であるつんく♂さんに「特別扱いしてくれ」といわれたこともあるいはあったかもしれません。
だけど一番の理由となるのは、やはりモーニング娘。は歌とパフォーマンスを届けることを第一の目的とした集団であり、佐藤さんには間違いなくその才能が見え隠れしていたことではないでしょうか。
その独特で鋭敏な感性、音楽的に優れた嗅覚や、これまでにいなかった声質まで、佐藤さんの持つ才能はモーニング娘。の未来において必要なものだという意識。
そして連綿と受け継がれたグループであるからこその、「モーニング娘。主義」とでもいえるような滅私の精神が、個の感情的な部分で佐藤さんを見放すとかその才能を潰すことを誰一人善しとしなかった。
ゆえに彼女は大きな愛情をもって先輩や同期(や1期下の小田さん)に根気強く育てられることになったのです。
実際当時からメンバーたちは佐藤さんの突飛なエピソードを面白おかしく話す一方で
そのステージングや歌唱については大真面目に同じ土俵で語り合っていますし、彼女に対して敬意も示しています。
また普段優しい鞘師さんや小田さんは、佐藤さんがステージ上で不誠実さや勝手なふるまいを見せた際に、容赦なく厳しい言葉を投げかけています。
そのあたりからも徹底した「ステージ主義」が伺えますし、それはファンにまで共有されているハロプロ独特の感性かもしれません。
ともあれ「モーニング娘。のことを全く知らず」加入した佐藤さんが、9年目を迎えようとしている今、そのグループの歴史や携わった人々も丸ごと抱え、先輩や同期、はては後輩たちにまで大きな愛を注ぎ、それを口にする様は、裏を返せば彼女自身がそれだけ大きな愛に包まれてこの8年間のモーニング娘。生活を送って来たことを意味するのではないでしょうか。
隠されたまーちゃん
さて前述の番組でつんくさんは他にも、ある意味非常に有名な言葉を残しています。
曰く、佐藤さんが本領を発揮するのは「22歳やな」という発言です。
後に「女子かしまし物語」の歌詞にも採用されたこの言葉は印象的で
その歳が近づくことへの不思議な高揚すらもたらしてくれています。
実際にあの頃からは考えられなかったほどのカリスマへと成長したまーちゃんの22歳はいったいどんな風になるのか…
期待と希望しかない近い未来に胸を躍らせているファンは多いことでしょう。
だけどこの発言、何気に物凄い発言です。
なぜならアイドルというのは「若さ」が最大の資本といえるのに
「10年寝かせますよ」とでもいうような発言だからです。
私は決して芸能界やその関係に詳しいわけではありませんが
10代前半で表舞台で活躍することも普通で、同年代がようやく社会に出始める二十歳前後には「円熟」を迎えている
というようなアイドルの世界において、「育成」という概念は非常に不似合なもののように感じます。
もちろん純粋に「成長期」の女の子たちで、あらゆる事柄を吸収して大きく変化していくのがアイドルの魅力ではあるのでしょうが
運営側の視点に立てば、明日よりも若い今を出来る限り売らなければ意味が無い、「成長過程」はあくまで副産物なのではないでしょうか。
実際幼いころの佐藤さん、あるいは佐藤さんと同じく10期メンバーの工藤遥さんとのコンビ「まーどぅー」は、子供ならではの破天荒さ、突飛さとキャラクター、関係性の面白さもありファンに大変愛されていましたし、
「このコンビを地上波で売り出せばかつての『辻加護』のように世間を巻き込んだムーブメントも夢じゃない」
「それを仕掛けようとしない事務所は無能」などという言説も多くありました。
事実、「まーどぅー」が出演し出川哲郎さんと花やしきに出掛ける「ブラックバラエティー」の企画は大好評で、続く展開が大いに期待されましたが結局以後は何もありませんでした。
事務所は佐藤さんのその突飛なキャラクターを推し出して売ろうという気はさらさらなく
それどころか「いかに爪痕を残すか」が大事なバラエティー出演の際に佐藤さんには「一言も喋るな」とお達しが出るほどに彼女は「隠されて」いました。
この事実は当時のファンにとっては大きな不満でした。
だけど後年になって考えれば事務所の意向はあくまで歌手、ステージパフォーマーとしての「佐藤優樹」を育てたいのであって
その突飛なキャラクターや「不思議ちゃん」を切り売りして瞬間的な人気を得ることに意義を感じないというものだった。
それは前述のつんくさんの言葉とも併せれば納得させられます。
もともとアップフロントグループは演歌歌手が多く所属し、テレビなどでの活躍よりも「興行」を主戦場とする事務所でした。
モーニング娘。やハロプロの発足時はテレビ局や大手広告代理店と組んで大ブレイクを果たすという一種のバブルに沸きましたが
それが終息したあとは、やはり興行に重きを置き、あくまでコンサートを主体に組み立てる活動で、採算ラインの見極めに非常にシビア。
「石橋を叩いて渡らない」などと揶揄される博打嫌いの体質に戻っていきました。
そんな事務所が重要視するのはいつも「コンサート」と生の観客に届ける生の歌声、そして音楽的により高いものを常に目指すという「音楽事務所のプライド」でした。
奇抜なキャラクターの子役やお笑い芸人が一時的に大変なブームを巻き起こし
あっという間に忘れ去られるというのもよくあるお話です。
仕掛け方によっては佐藤さんや「まーどぅー」もそういう潮流に乗せようと思えばできたかもしれません。
だけどつんくさんを始めとしたアップフロントの大人たちは、あくまで歌手として佐藤さんを芸能界に引き入れ、責任もって歌手として育て上げるという考えのもと「バラエティでの緘口」を行ったのです。
10年かけて育てるという自信
さてこの「22やな」という発言は冗談めかして放たれてはいますが
その実かなり大きな自信に裏打ちされた「割とマジ」な発言だったと思われます。
というのもこの時期(2012年頃)は後にいうプラチナ期が終わりカラフル期が始動した時期。「再ブレイク」の狼煙が上がり始める時期でした。
その原動力は佐藤さんたち9期10期の若くフレッシュなパワーはもちろんですが、いわゆる「10年選手」たちの牽引力が大きかったのです。
モーニング娘。では高橋さんや新垣さん、道重さん、田中さん。
またベリーズ工房と℃-ute(いわゆるハロプロキッズ)も、「ただの子供」たちが
10年の時を経てアイドル界を牽引する重鎮となっていました。
中でも、新垣さんや道重さんといった加入時にはどうしようもない「落ちこぼれ」だったメンバーが
圧倒的なカリスマ性を放つメンバーへと変化したことは、事務所にこの上ない「育成への自信」を植え付けたのではないでしょうか。
若さの中で輝きを放ち彗星のように去っていくのがアイドルという考え方が主流という中で、10年かけて花開き、そこから伝説を刻み付けるアイドルというものが存在しうることに気付いたのがこの頃。
それはアップフロントだけでなくアイドルファン、ひいてはアイドル界全体の目から鱗を落とした「気付き」でした。
逆説的に言えば大真面目に10年かけて育てようと思っていたからこそ
佐藤優樹さんはモーニング娘。のメンバーに選ばれたのだといえます。
なぜならその突飛なキャラクターを売り出して消費しようという意図が無い以上、コミュニケーションが難しく大人の意図通りに動いてくれない制御不能な佐藤さんはその当時において使い道の難しい存在だったからです。
即戦力や最初から圧倒的なスターは勿論素晴らしい。
だけど今なかなか芽が出ず、人気も無くて若い時間が刻一刻減っていくというメンバーがいても、10年後に何か一つのモノを残し、ハロプロの歴史に刻まれていればそれでいい、というアップフロントとそのファンの価値観はアイドル界においてはなかなかに稀有であるように感じます。
というのも新垣里沙や道重さゆみの成功体験は、そうなるように仕向けたということは全くなくて、ハロプロというシステムの中で偶然にも本人たちの資質とうまく噛みあってそうなった、という類のものなので。
ただそういう「10年待つ余裕」は、ファンに様々なアイドルの楽しみ方を提案してくれたと同時に、事務所が焦らずじっくり育てる、ひいてはメンバーを大切に育てるということにも繋がっています。
それはファンにとってとても安心できることなのです。
今の佐藤優樹さんが見られるのはハロプロだけ!
さて、事務所にとって最初から「じっくり育てる」つもりで迎え入れた佐藤さん。
偶然そうなったのでは無いという意味で、育成メンバーとしての第一号といえるかもしれません。
そんな佐藤さんの現在の姿はまさに「育成の大成功例」といえるのではないでしょうか。
勿論、幼い頃から彼女には奇抜なキャラクターの隣に鋭い慧眼、深い思慮と洞察や優しさ、そして音楽的才能と数えきれない魅力がありました。
それをしっかりと見抜き、見出したつんくさんを始めとした当時のスタッフ。
そして何より、あの頃の魅力を失わず、カリスマ的な歌手、パフォーマーへと成長を遂げた本人。
メンバー、周囲の人たちにも感謝と賛辞を送らずにはおれません。
まだまだ、22歳まで、いやそれ以後もどんどん私たちをわくわくさせてくれるであろう
佐藤優樹さんのこれからが楽しみでしかたありません。
もし佐藤さんが、全く知らないにも関わらず門を叩いたのがハロプロ・モーニング娘。でなかったら
彼女は果たして今ほどの輝きを放つ芸能人になっていただろうか。
そんなところから逆算的に、私がハロプロを愛する理由を数え上げたりなどしているのです。
モーニング娘。13期14期「かえれなちぃ」(加賀楓、横山玲奈、森戸知沙希)で妄想したい!
こんにちは。大変お久しぶりです。
モーニング娘。に初々しい15期メンバーが加入し、しかもそれが3人ということで、
カプヲタであると同時に「3人組大好き」でもある私は非常に高まっています。
モーニング娘。には珠玉の2人ペアが山ほどあると同時に、
「3人」になるとまた異彩な魅力を放つ組み合わせが数多く存在します。
ぽんだーぽん、田ーズ、現12期…
そんな中今回紹介したいのは13期メンバー2人(加賀 楓 横山 玲奈)と14期メンバー1人(森戸 知沙希)からなる3人組
いわゆる「かえれなちぃ」です。
※今回のブログは特に妄想過剰のカプヲタブログとなっております。
9割5分妄想であっても平気という方だけお進みください。
ねじれた関係
さて、15期メンバーが加入するまで
モーニング娘。で一番下の後輩3人組という立ち位置で、ブログを共有していたりと、なにかとひとまとめになることが多かったかえれなちぃ。
その13期と14期は、歴代モーニング娘。で最も複雑なねじれた関係です。
・年齢は13期加賀さんと14期森戸さんが同学年で、13期横山さんが一つ下。
・ハロープロジェクトに関わった順では ハロプロ研修生としての下積みが
長かった加賀さんが一番先で、次いで森戸さん、横山さんの順。
・ハロプロメンバーとしてのデビュー順ではカントリー・ガールズとして先に
デビューした森戸さんが一番で、次いで加賀さん横山さんが同時デビュー。
・モーニング娘。に加入した順番は「期」が示す通り、加賀さんと横山さんが先で森戸さんが後です。
まだ殆どすべての部分で後輩である横山さんはいいのですが
加賀さん、森戸さんの二人の関係は本当に複雑で、
森戸さんが加入後しばらくはお互いに「さん」付けで呼び合うような状況でした。
現在は「ハロープロジェクトの正規メンバーとしてユニット入りした時期が優先で、研修歴は加味しない」という概ねハロプロ内で主流の序列感覚に依って
よりデビューの早い(12期メンバーと同時期)14期の森戸さんが13期の二人よりも先輩格ということに落ち着いています。
そんなきわめて複雑なねじれ関係にあった13期と14期。
特に加賀さんと森戸さんの初期の関係はぎこちなく、「壁があった」と述懐されています。
(森戸さんの加入から1年近く経った頃でも「壁は障子一枚くらいになった」とまだ薄いながら隔たりがあることが仄めかされていました)
中心となる横山玲奈
複雑怪奇な3人の関係は13期メンバーで一番後輩、笑顔の愛嬌モンスター横山玲奈さんを中心として回り始めます。
まず13期の二人、加賀さん横山さんの関係は以前私が書いたかえれなの記事をご参照されたく思います。
といっても記事を書いた当時と今では関係も雰囲気も随分変わっているのですが
それでも13期が互いを尊重し、信頼しあい、ふざけ合い、補完し合い、背中を預け合う唯一無二のパートナーであることは変わっていません。
あえて断言しますが、加賀楓さんは横山玲奈さんのことが大好きです。
それは相方について語る声色、すぐ話題に上らせてしまう、それでいてつっけんどんを装う言説などから
少し彼女を観察していれば誰でも感じ取れる厳然たる事実です。
横山さんの明るさや包容力に加賀さんが日々救われているであろうことは容易に想像でき
また加賀さんの横山さんに対する言葉からは感謝や慈しみ、「守ってあげたい」「共に歩みたい」「甘えたい」といった様々な感情がありありと滲み出ています。
そして森戸知沙希さんもまた、横山玲奈さんのことが大好きです。
これは幾度と無く直接的に本人の口から語られている厳然たる事実であり、森戸さんと横山さんは基本的にいつも一緒にいます。
二人のブログに、互いの写真しか上がらないという時期があったほどの蜜月ぶり。
森戸さんのモーニング娘。加入直後から二人の仲は急接近していきました。
ノリの近さや話しやすさ、共通の趣味があったことも大きかったのでしょう。
二人は瞬く間に大の仲良しに、そして信頼し自身を預け合える関係を築き上げました。
特に印象的なエピソードはtiny tinyで語られたもの。
【tiny tiny#60】ゲスト:モーニング娘。'18/カントリー・ガールズ 森戸知沙希 コーナー出演:モーニング娘。'18 加賀楓、アンジュルム 室田瑞希 - YouTube
2018年、横山さんは明らかに気落ちし、笑顔が減りファンから見てもそれがわかり心配になる時期がありました。
この年は彼女にとって様々なことが起こった年であり、ファンは原因を憶測することしかできず、心配しながらも見守るしかない状況でした。
そんな中、体調を崩してしまった横山さんに対して森戸さんが送った言葉を
印象的な言葉として横山さん自身があげています。
「めちゃめちゃよこやんのこと好きなんだよね。ずっと隣にいてほしい」
森戸さんが、彼女なりの言葉で伝えたそれは、横山さんに極大の優しさとして受け止められ、救いになったようです。
だけど外から見て優しさに匹敵するほど感じられるのは、そんなストレートな想いをぶつけざるを得なかった大きな不安と
それを生み出した大きな大きな、純粋な「好き」の感情でしょう。
森戸さんの横山さんに対する視線は、殆どの場合同じノリで楽しめる仲良しの友達という風ですが
時折実の姉妹をみるような、あるいはそれ以上とも思える愛情の眼差しであると感じます。
加賀さんと横山さん、森戸さんと横山さんの絆は深く、ともに唯一無二といえるような関係です。
加賀さんと森戸さんが横山さんに向ける愛情もまた、その色合いは違えども極めて大きなものであることは間違いありません。
よこやんを挟んだ「かえちぃ」の関係
さて、加賀さんと森戸さんの関係に戻りましょう。
前述の通り、そもそものねじれ関係に加え、住む世界が違うといえるほど性向の異なる。
そんな二人に「横山さんを挟んだ関係」が加わってさらに複雑さは増します。
ところでこの二人、不思議な共通点を持っています。どことなく遠慮がち。
言い換えれば「思慮深い」
といっても、じっくりと物事を突き詰めて考えるというよりは、直感的に
本質や「正解」に近い思考を導き出せるセンスの持ち主、というのが私が加賀さんと森戸さんに感じる共通した魅力です。
二人は勿論グループの仲間として、あるいは最もねじれた関係にあるその相手として互いを意識していたことでしょう。
それとは別に「横山さんの向こう側にいる相手」としても意識していたのではないかというのが私の妄想の根幹です。
つまり加賀さんにとっての森戸さんは「横山に最も近くで寄り添い、趣味を共有し、護ることが出来る先輩」であり
森戸さんにとっての加賀さんは「よこやんにとっての唯一無二の、絶対的な絆で結ばれた同期」。
何となく「横山さんにとっての自分は彼女には敵わない」と、二人ともが思ってそう、とか。
ちなみに横山さんから二人に対しては、もちろん大きな愛情があることは簡単に見て取れます。
森戸さんに対しては愛犬のようにじゃれつく一方で、加賀さんに対してはがつがつと圧を掛けたりふざけたりして「同期」を主張します。
どちらへの愛情が大きいなどということは到底言えないでしょう。横山さんにとって加賀さんと森戸さんはカテゴリーの全く違う
だけど「とても大切な人」なのだと思います。
そんなこんなで14期の森戸さんがモーニング娘。に合流してからもう2年以上の歳月が流れました。
3人にとって紛うことなき後輩である15期が加入した今、加賀さんと森戸さんの間に「ぎこちなさ」は全くありません。
以前加賀さんは「森戸さんが可愛い」なんてことを言っていましたが、それは少し離れた場所から見るファン目線的な言動で
「壁」が無くなった今、そんな言葉は彼女の口からは出てきません。
もちろんモーニング娘。の仲間として一緒に数々のことを為し、徐々にその壁が取り払われていったのだと思います。
加賀さんと森戸さんの間にははっきりと、独自の絆が育まれています。
だけど私は二人の「絆」を思う上で横山さんの存在を感じずにはおれません。
妄想人間の悲しい性として。
加賀森戸の絆が育まれていった途上には、例えば互いの横山さんに対する深い愛情があることを看過し、感じて、互いの想いを認めあって同じ想いを持つ同士としての連帯感が芽生えた、なんということは無かったでしょうか。
よこやんにとっての相手が大切な存在であるからこそ、大切な人の大切な人が自身にとっても大切な存在になっていくという迂遠なプロセス。
「無いものねだりの憧憬」が「思慮深い」二人によって共有と共感に変わり、全く違うねじれの先にいたはずの相手が、自身の深い想いを共有できる唯一無二の相手に昇華されていった。なんということがあればとてもドラマチックかな、なんて。
ちなみにこの3人で遊びに行ったことも報告されていて、ブログではとても楽しめた旨が綴られていました。
実際横山さんと加賀さん、横山さんと森戸さんではしゃぐ姿は容易に想像できますが
加賀さんと森戸さんがプライベートでいったいどんなテンションで盛り上がったのかは、いろいろ想像が膨らみます。
大いに煩い、楽しい三人なので笑いが絶えなかったことは想像に難くありませんが。
ふと、はしゃぐ横山さんを見て「可愛いなぁ」という想いを刹那に共有した加賀さんと森戸さんが意味深に微笑みあって、それを見つけた横山さんがキャンキャン吠える、みたいな場面が脳裏に浮かんで、さすがに現実の3人から乖離しすぎた妄想だな(笑)と反省するなどしています。
なにげに加賀さんが一番はしゃいでそう(笑)
ともあれ、今の3人が「楽しく」互いを信頼しあって仲良しであることは揺るぎない事実として
久々にこのブログで妄想を書きなぐろうと思わされた
9月11日の3人のブログを貼って終わりにしたいと思います。
『なーーんだ。』森戸知沙希 | モーニング娘。’19 13期・14期オフィシャルブログ Powered by Ameba
絶対見ないでください。横山玲奈 | モーニング娘。’19 13期・14期オフィシャルブログ Powered by Ameba
こんばんは。 加賀楓 | モーニング娘。’19 13期・14期オフィシャルブログ Powered by Ameba
あらためて「先輩」となったかえれなちぃの3人に、これからも目が離せません。
モーニング娘。の圧倒的夫婦9期「ぽんぽんコンビ」の謎に迫りたい
こんにちは。お久しぶりです。
さて、現モーニング娘。には「圧倒的夫婦」なカプが存在します。
ぽんぽんコンビ(譜久村聖×生田衣梨奈)がどれくらい圧倒的かというと
加入してもうすぐ8年、片時もイチャイチャしてなかった時は無く、メンバーにとってもファンにとっても関係者にとっても、二人が一緒に居ることは当たり前で、そのいちゃつきは最早日常の風景であり空気のような存在、ゆえにスルーされる。
それほど圧倒的な夫婦です。
二人は現モーニング娘。’18におけるリーダーとサブリーダー。
事実上2トップとしてグループを牽引する大黒柱的存在です。
そういった立場も併せて、モーニング娘。の両親と例えられることも多い二人を見ていきましょう。
- グループの変遷と譜久村リーダー体制
二人は共にモーニング娘。9期メンバーとして2011年に加入しました。
それまで築き上げられたプラチナ期の終焉と9期メンバー加入によるグループの革新は、「現在」からモーニング娘。の21年史を振り返る上で最大級のトピックスと言える出来事でしょう。
とにかく、この9期4人の加入によって、現在まで続くモーニング娘。の礎が築かれていきました。
9期メンバーは、前例のない手探り状態のことがらが多く、兎にも角にも早い成長が求められました。
加入僅か3か月で10年近くのキャリアを持つ先輩たちの中に放り込まれての単独ツアー。
9か月で「先輩」となり、ぽんぽんの二人は僅か2年半でグループ内の序列2位と3位になりました。
そして譜久村さんは、2014年11月、史上最年少でグループのリーダーとなりました。
前任者の道重さんの圧倒的な存在感もあり、リーダー就任直後の譜久村さんの路は本当に険しいものに見えましたし、しばらくの間順風満帆とはいかない時期が続いていたように思います。
ただ、現在のモーニング娘。が非常にいい形で成熟し、完成度の高いチームになっているのはひとえに、彼女たちが早熟の求めに答え真っ直ぐに経験値を積み、考え続け悩み続けた先に出来たもの。
最高のチームを作りたいという想いを共有し、それぞれがお互いの役割を理解し最適な姿へと自身を変えていけたことが、「今が最高」と言い続けられるモーニング娘。を繋いだのだと思います。
譜久村リーダー、生田サブリーダー、そしてもう一人のサブリーダー飯窪さんと、ダンスリーダーの石田さん、歌姫の小田さん、そして佐藤さん。
グループを引っ張るお姉さんチームのバランスは、まさに完璧と言える布陣なのではないでしょうか。
今更ですが、少しおさらいしましょう。
譜久村聖(ふくむら みずき)
9期メンバーで現リーダー。歌、ダンス、ステージパフォーマンスにおいて常に高いレベルでグループを牽引し、グラマラスでセクシーな魅力でグラビア方面でも活躍。
一方で普段はおっとりふわふわとした柔らかい言動、少しおバカな発言や適当な発言から「モーニング娘。の高田純次」などと呼ばれたりもしています。
そのグループ愛、ハロプロ愛の深さは他の追随を許さず「ハロプロを知らない人は人生の10割を損している」という言葉は有名です。
生田衣梨奈(いくた えりな)
9期メンバーで現サブリーダー。西洋彫刻のような美しい顔やスタイルを持ちグループナンバー1の身体能力を誇るフィジカルエリート。ステージ上で披露するバク転やバク中は圧巻。加入時から歌下手を持ちネタにしていますが、並々ならぬ努力で現在では歌唱でもダンスでも目立つ存在になってきています。
サバサバとした性格で、KYキャラなどとも言われていましたが、とにかく前に出る積極性、誰とでも仲良くなれる社交性や行動力は様々な場面でグループの躍進に一役買っています。また特技のゴルフでは番組、企画等、活躍の場を広げています。
二人は能力、性向ともに全く違っていて、「学校で同じクラスだったとしても絶対に仲良くならない」とよく言っています。
そんな二人は、グループを牽引するスタンスも随分と違います。
例えば後輩たちとの接し方では、譜久村さんは常にフラットであることを心掛け、全体を見渡すことに主眼を置いているようにみえます。
みんなに優しく寄り添い、指導もし、話をする一方で、誰か一人に肩入れしたり、深く入り込むことはあまりしない。「一番仲のいい先輩」として名前があがることは少ないながら、全員から常に平等に接してくれるという信頼を得て、安心感も与えているようです。
一方で生田さんは気まぐれでKYという自身のイメージを利用して、その時々新メンバーで不安を抱えていそうな子、何か悩みや壁にぶつかっている子にダイレクトに親身になり話を聞いてあげます。遊びに連れ出したり、楽しい思い出を作ったり。
必要と思えば即座に行動し、それを優しさでは無く気まぐれだったり「いい先輩キャンペーン」などと照れ隠しの言い訳をします。
リーダーという立場上譜久村さんがなかなか出来ないことを、生田さんがキャラを最大限に生かしてやっている印象です。
またグループの担う部分としても、ステージパフォーマンスにおける中心的存在の譜久村リーダー。
一方そんなリーダーが苦手とするバラエティ方面で、とにかく積極的に爪痕を残しに行く生田サブリーダーと、互いの苦手分野を補完し合っています。
(ここに落ち着いたトーク回しや機能的な渉外活動が出来る飯窪さんが加わった現トロイカ体制は、本当に穴の無い理想的布陣と思えます)
そんな補完関係にあるお二人、
イメージとして、譜久村さんはおっとりとして優しいお母さん。
生田さんはサバサバして強くカッコイイお父さん、という印象を抱く人も多いと思いますが、もちろんそういう面も大いにあるのですが、本質的にはグループに大きく貢献しているのは譜久村さんの「強さ」生田さんの「優しさ」ではないかと、私は思います。
先にあげた後輩とのエピソードでも、生田さんの「優しさ」の特徴は「迷いが無い」ことであると感じます。
「善かれと思ってやったけど、本当は嫌なんじゃないかな?」といった迷いが一切感じられず、「自分がしてもらって嬉しいことは相手も嬉しい」と信じて真っ直ぐにその想いを届けることが出来る。迷いが無いから行動は迅速で、その行為が実際にどうかはともかく、真っ直ぐな思いが届くから、相手は救われるのではないでしょうか。
生田さんが愛されて育ち、悪意よりも善意を正しいものと受け止めながら生きてきたことが、ありありと伝わります。そんな生田さんの優しさはグループの大きな救いになっているのではないでしょうか。
いつだか佐藤さんがこんなことを言っていました。「生田さんの優しさに気付けない人はバカチンですよ」。
一方譜久村さんの優しさは、包み込む優しさ、受け入れる抱擁であり、「待ち」の優しさ「忍耐」の優しさでもあると思います。メンバーの想いや決断も受け止め、どんなこともグループにとって意味があることだと肯定する、徹底的な「モーニング娘。主義」
そのぶれない根幹、そして忍耐力、継続力こそが譜久村さんの「強さ」であり本懐であると感じるのです。
リーダーとしての膨大な量の書き物や挨拶、欠かさないOGへの連絡もそうですが、地味なこと、目立たないことでも絶対におざなりにしない部分は譜久村さんが信頼を集める大きな要因でしょう。
それはステージパフォーマンスなど、どの場面にも言えますし、じっくりコツコツと続けること、そしてそれを語らずとも如実な成長として結果で示されることにおいて、これだけ背中で語れるリーダーもいません。
彼女が真っ直ぐな思いを保持し、ぶれず、逆境も耐え忍び前に進むその「強さ」は、直接モーニング娘。の「強さ」につながっている気がします。
- いちゃいちゃ、ベタベタなぽんぽんコンビの謎
2トップであり、深くグループを愛し牽引している二人。
だからこそ、いつもいちゃいちゃベタベタしていることがいささか不思議に思えてきます。グループの2トップが常に二人だけの世界を形成して一緒にいることが、いいこととは言えないからです。
そしてそれが分らないような二人では無いだけに、不可解でもあります。(ファンから見ればいいぞもっとイチャつけ結婚しろ!という感じですが)
冗談交じりですが14期メンバーの森戸さんに指摘されて、生田さんはしどろもどろになりながらこんな言い訳をしています。
「同期が卒業してしまって二人だけになったから、寂しくて」
いやいや、あなたたち、卒業した二人(鞘師さん、鈴木さん)が在籍してた頃からいっちゃいちゃのべったべたでしたよ。
想えば加入したての中学生の時分、
「みずぽんです!」「えりぽんです!」「二人合わせてぽんぽんです!」
なんてやっていた頃は、いわゆる「仲良し」という感じで微笑ましいものでした。
子供同士の友情という風から、どんどんこの二人は「共依存」関係になっていきました。
バスや車の座席は必ず隣、食事する時も何をする時も基本的に隣で、誰かが居ても誰もいなくても手や腕を絡めているし、仕事で毎日顔を合わすのに、夜には何時間も電話をしている(特に話題も無く互いに無言でも通話を繋げている)
これらが子供の頃のエピソードでは無く、お互い二十歳を超えた今でも連綿と積み上げられているエピソードなのですから、もはや百合ヲタをも瞑目させます。
お互いに対する言動でも、少し特殊なところがあります。
特に生田さんは、好きな人(新垣さんや米村きららちゃん等)には積極的にベタベタと絡みに行く人ですが、その際全力の「好き好きアピール」を怠りません。言行一致というか、とにかく「好き」は言葉にだすものという生田さんの流儀なのでしょうか。
しかし譜久村さんに対してベタベタと絡みに行く割に「好き」が言葉として語られることは殆どありません。誰がどう見たって好きで好きで仕方ないのに、それを指摘されると「別に」といった態度。これは譜久村さんに対してのみの態度です。
また譜久村さんはよく「あっち(生田さん)が自分のことを好きすぎるから」と笑って濁しますが、これも生田さんに対してのみの言動です。
譜久村さんはあまり自分に自信を持っているタイプのポケモンでは無いので、他人からの好意を茶化したりということはまずしません。そんな譜久村さんが生田さんからの好意は確実で揺るぎないものであるという絶対の自信を覗かせているのですから、彼女の生田さんへの執着も相当なものです。それは一方的に憧れている嗣永さんや亀井さんへの執着とは全く別種ではありますが、熱量は間違いなく匹敵しているでしょう。
なぜそこまで二人は依存しあうのか。
なぜそこまで、絶大な信頼を寄せ合うのか。実のところそれは、メンバーもファンも分っていません。お互いが「誰が可愛い」「誰が好き」と興奮して話していたって、嫉妬することも無く余裕で笑っている。それぞれにガールハントにいそしんでいても、その隣の席は自分のものという揺るぎない自信が伺えます。
なんで?
私は割と本気で、若き日に「過ちの一夜」があり、お互いの秘密、のど元の刃を握り合っているが故の共依存なのではないかと思ってます
ともあれ、二人の共依存関係は他のメンバーにとっても、当たり前の風景であると同時に、深く立ち入れない聖域となっているのです。
- グループの役に立つぽんぽんの親密さ
そんなぽんぽんの二人が、過去に一度だけ大喧嘩をしたというエピソードがあります。
時は2015年春、二人がリーダー、サブリーダーとなって初めてのツアーであり、偉大な前任者道重さんの手を離れ、そして初めて自らの手で育てることになる12期メンバーのデビューツアーでもありました。
リハーサルの段階で12期メンバーが極端に出来ていない曲があり、そこで二人の意見は対立します。
譜久村さんは完成度が低いままお客さんに披露することは出来ないからセットリストから外そう、という意見。
生田さんは、完成度の低さも含めて今の12期を見てもらうべきだ、という意見。
この時二人は真っ向から対立し、しばらく口もきかないほど険悪になったと後に述懐しています。
もちろんそれぞれ12期のことを考えての意見であることは確かで、譜久村さんはエッグ時代からの経験でセットリストから外される等の悔しい想いが成長の糧になると考えたでしょう。なにより道重体制が終わって新生モーニング娘。となった初ツアーで12期によってクオリティが著しく下がったと言われることへの抵抗もあったと思います。12期の努力を知っていたからこそ、12期を含めた15のツアーの大成功を目指したかったのでしょう。
生田さんは逆に、初ツアーで道重さんと歌うはずだった曲をセトリから外されたことがずっとトラウマになっていることや、とにかく追い込まれて12期の気持ちが萎縮してしまうことを憂いていたのだと思います。
そして「アイドルは『プロ』でありながら成長の過程を見られるもの」という、一貫したアイドル観もあって、ぜひ12期をステージに立たせてあげたかったのでしょう。
結局この時の対立が、どちらの意見に決着したのか、はたまた12期が奮起してそもそもの原因を吹き飛ばしたのか分りません。
またこの時、パフォーマンスリーダーでエースだった鞘師さんや、いつも冷静な仲介役だった鈴木さんがどういう意見を述べたのかも話には出てきていません。
ただここから読み取れることは、譜久村さん、生田さんの二人ともがグループに対して限りなく真剣で、二人の関係はほぼ対等に近く、そしてそのスタンスは全く違うということです。
二人のスタンスが全く違うことが上手く補完しあっているというのは、前半でも述べたことですが、それはかなり奇跡的なことでもあります。
これだけ違う考えが真っ向からぶつかり合えば、グループは真っ二つに割れかねない、常に意見の相違によって「譜久村派」「生田派」に分かれ対立しかねないのです。
だけどそれはありえない。
なぜなら二人は意見の対立をものともしないほど、いっちゃいちゃのべったべただからです。
この12期初ツアーのエピソード以後、特に喧嘩らしい喧嘩もしていないという二人。
多分考え方の相違は常にあるでしょう。だけど対立するよりも、お互いの意見の長所や利点をすり合わせる方に自然と向かうようになっている。
だからスタンスの違う二人が2トップにいながら、互いを補完し合いグループを向上させられるという理想的な組織体制が出来上がっているのです。
生田さんは自身のサブリーダーとしての役割についてこんなことを言っています。
「(もう一人の飯窪さんに比べて)何もしていない。聖を支えることだけ」
もう何というか結婚しろよ。と、思いますよね。
二人が卒業した後にでも、おめでたい報告が聞けるといいですね。
ちなみに9期メンバー(同期)の鞘師さんの名言
「ビジネスぽんぽん…ビジネスぽんぽん…」
微笑ましいですね!
モーニング娘。に確かに在った幻想のカプ「はるまき」について語りたい
※今回はかなり妄想分高めです。ご注意ください
さて、これまで紹介させていただいたモーニング娘。内のカプでも「かえれな」「だーさく」はかなりの人気カプであり、メジャーといえる組み合わせでした。
ですが大所帯のモーニング娘。のこと。もちろんマイナーなカップリングも多数あります。
12期の同期カプではあるのですが、特別仲が良かったわけでもなく、エピソードもあまりなく、しかも片方(尾形春水さん)が今年の6月に、既に卒業してしまっているという、非常に朧な組み合わせです。
それでもここで取り上げたいと思ったのは、私の百合ヲタとしての感覚を恐ろしいほど刺激し、妄想の翼の羽ばたきを止めることが出来なくなる、そんな二人組だから。
物凄くお暇な方だけ、しばし私の妄想にお付き合い下さい。
- 尾形春水さんについて
何を隠そう、尾形さんは私のモーニング娘。’18での二推しメンバーなので、卒業してしまったことは今でもとても寂しく感じています。
なので「はるまき」を語る前に少しだけ、彼女がどんな子だったのか私なりの考えを書かせてください。
尾形さんにはやはり「普通の人」「普通の女の子」という言葉がしっくりきます。というのも、モーニング娘。のメンバーは皆、どこか「普通じゃない」「異能の」「逸脱した」「超越した」部分を持ち合わせているように感じるからです。
モーニング娘。にいる、それだけでかなり特殊な状況です。思春期の同年代の女の子達が普通に過ごしているであろう青春とは全く違う生活。年間で休みが二桁あるのかも怪しいほど、毎日働き詰め、自分を律し、パフォーマンスを磨き、歴史を背負い、それだけのことをこなして尚、笑顔で「楽しい」と言って過ごせる精神。
それは驚嘆に値することでもありますが、我々「普通の人」からすれば「異常」な状態であるのも確かです。「モーニング娘。に全てを捧げる」という感覚は「普通」ではありません。
彼女たちはその環境の中においてそう「成った」とも見えるのですが、個々を見ればやはりみんなどこか特別な「異質」な才能の持ち主であり、それ故にモーニング娘。足りえたように思えてきます。
そんなモーニング娘。において尾形春水さんからは、「普通」の私たちと同じ側の人間であるという印象を覚えることが多くありました。
ファンタジー小説や漫画やアニメで、ごくごく普通の学生が突然異界にワープしてしまって、そこで起こっている戦いに巻き込まれるという設定をよく目にすると思いますが、尾形さんからはまさにそんな印象を受けていました。
異界の超人たちの戦いの中に、ほんの少しの好奇心で足を踏み入れてしまった、何の超能力も持たない一人の少女。それでも出会った異能の仲間たちと共に、その力を振り絞って戦う、そんな印象です。
尾形さんは、歌もダメ、ダンスもダメ、覚悟が据わっているわけでもなく、何をやらせてもヘナチョコな劣等生でした。
彼女は、そんな遥か後ろのスタート位置から、信じられないような努力で必死に食らいつき、仲間たちの後をついて行きました。その努力がどれほどのものだったのか、それは「ついて行った」という結果のみから推測されるだけ。彼女の口から語られることはありませんでした。
彼女は常に自分を傍観者の位置に置いて、アイドルの物語の中心とはならず、自身とその世界とを融合させないまま去って行きました。
モーニング娘。として過ごした4年足らずの間に、仲間やグループへの深い愛情が育まれていたことは、彼女の姿からありありと伝わっていました。それでも自身を変質させてまで「異界」に馴染むことはせず、頑固に元の世界へ戻ることを選びました。
ナルニア国からイギリスに戻った兄弟のように、あるいは大冒険を終えて東京へ戻ってきたのび太くんのように、私たちの住む「普通の世界」に彼女は帰ってきたのです。
道重さゆみさんは、自身の苦悩や劣等感、嫉妬心なども全てファンの前にさらけ出してありのままの彼女を愛させ、伝説的なアイドルとなりました。
尾形さんは全くの逆で、劣等感や辛さ、明らかなストレスによる体型の変化、深い苦悩も、後になって断片的に語られただけで、いつも彼女自身はへらへらと笑って気楽そうでした。そして最後の瞬間まで満面の笑顔で「幸せです」とだけ残して去っていったその姿には、決してアイドル足りえなかった、だけど多くのファンを魅了し、メンバーからも愛された彼女の「人としての魅力」が浮かび上がっていた気がします。
メンバーが口々に語った「尾形は優し過ぎる」という言葉は、決してアイドルとしてプラスになる部分では無かったでしょう。それでも「人として」彼女が愛された最たる部分だったのでは無いでしょうか。
そして尾形さんの、歯を食いしばって努力し、苦悩しながらも、「別にええやん」と飄々と言える、冷静で俯瞰的な視点は熱暴走しやすいモーニング娘。の冷却材として、これからも必要な存在だったと思います。
そんな魅力的な「普通の人」、だけどアイドルとしては異邦人であった尾形さんと、同期にして全く対照的だったのが牧野真莉愛さんです。
- アイドルの天才牧野真莉愛と尾形はーちん
尾形さんと牧野さんは、それなりに複雑な関係です。
同じ12期。ただし一般オーディションで合格した尾形さんと、研修生から昇格という形になった牧野さんとは、合格者の顔合わせの時まで面識もありませんでした。
歳は尾形さんが12期で一番上。だけど研修生組ではもう一人の羽賀ちゃんよりも先輩の牧野さんが、いろいろな意味で一番「分っている」立場でした。
期で一番のお姉さんである尾形さんが先頭を切っていろいろなことをしなければならない、だけど実際には一番「出来ない」のが尾形さんでした。
尾形さんだけダンスが覚えられず連帯責任で12期全員が怒られるということも頻繁にあったらしく、そのたびに牧野さんが必死で尾形さんに教えていたそうです。卒業間際のトークではお互い軽く語っていますが、尾形さんの中に深く負い目として刻まれていることは想像に難くありません。
牧野さんは、尾形さんとは正反対と言える女の子でした。
純粋に自分をさらけ出すことができ、好きなものを好きと言い、好きなものに限りない情熱を注ぐことが出来る。自分の正しさを信じ人の正しさも信じ、決して他人の悪口は言わず、謎のらぶりんキャラもやりきる。
あまりにも純粋なその精神は、仮にモーニング娘。でなかったとしても、とても「普通」ではない。そんな女の子が牧野さんなのです。
現世に舞い降りた天使かと紛うようなその心は、アイドルとしてはまさしく天賦の才であると思います。ただしもしアイドルで無かったとしたら、私たちと同じ世界に居たとしたら彼女はひどく生きにくいように思えるのです。
過去に学校で「イラっとするって言われる」「何故か人が居なくなる」ということをポロリと吐露したことがありますが、牧野さんの純粋さは悪意にさらされやすそうです。
天使は人の世では生きていけないのかもしれません。
尾形さんと牧野さんは、そのあまりにもかけ離れた性質故に、互いにとても眩しい光を見ていたように思います。
ファンタジーの例えで言うならば人間とフェアリー、まさに異種族と言えるくらい二人の属性は違っていたからこそ、お互いの美点に対する憧れはとても強かった。
尾形さんにとっての牧野さんは、そのどこまでも純粋な心とアイドルとしての圧倒的な才能、牧野さんにとっての尾形さんは、その誰からも愛される人間力。それを夜天の星を見上げるがごとく想っていたのではないでしょうか。
尾形さんは、自身との絡みやエピソードは少ないながらも、よく牧野さんのエピソードを紹介していました。突飛な話を面白おかしく披露し、よく褒めていました。
決して仲が悪いようには見えませんでしたが、余りにも性質が違い、趣味嗜好にも一切の共通点を持たない二人の距離感は、知らない異国の地にいる外国人の友人と衛星電話で話しているような、被る部分が何もないから摩擦も無い、だけど常に一緒に居られるような関係でもない、といった風でした。
牧野さんは、少ない尾形さんとのエピソードの中でもとりわけ、尾形さんが自分に対して優位性を示してくれた場面の話を繰り返し繰り返し、何度も何度も披露しています。
・一緒に企画でスケートリンクに行って、優しく自分の手を引いてすいすい滑ってくれたこと。
・中学生時代に勉強を教えて貰ったこと。
アイドルとしては何をしてもダメで、自転車にも乗れないほどの運動音痴、手持ち花火にも悲鳴を上げるほどのビビリの尾形さんに、それでも憧れ、愛して、慕っていた牧野さんは、尾形さんの「かっこいい場面」を大切に大切に思っていたのです。
異種族の二人は、触れ合うこともできない程の遠い遠い心の距離で、
さながら叶うことのない片思いでもしているように強い憧れを互いに抱いているようでした。
- はーちんの卒業発表
尾形さんの卒業発表に対するメンバーの反応は、寂しいという感情を軸にしながらも様々なものがありました。
まだまだモーニング娘。として出来ることもあったであろう尾形さんに対して、勿体ないという気持ちは、メンバーは勿論ファンも大いに感じていたところでした。
そんななかでも、牧野さんの尾形さんに対する態度はとても印象的でした。
モーニング娘。を辞めて大学進学という目標に舵を切った尾形さん。
「何かを勉強したい」ではなく「大学に進学したい」という目標はモーニング娘。を続けるということと比較するのにあまりに茫洋としていて、どうとらえるべきか戸惑っていたファン、メンバーもいたかもしれません。(異世界へ飛ばされたフォーリナーの「地球へ帰りたい」という想いに類するものと思えば、私にはとても納得できるのですが)
そんな中牧野さんは、尾形さんの選択をとにかく肯定しました。
モーニング娘。の活動と並行して勉強に励んでいた努力の姿をしきりにファンに報告し、4月から通い始めた短大での生活の話をたびたび請うて、ファンの前で話させました。
尾形さんの選択は正しく、その大学生活は輝かしいと、そのことに一片の疑いも無いというような牧野さんの姿勢は清々しく、尾形さんのファンの一人としてその選択を全肯定してくれるメンバーがいることに救われました。
遠慮がちながら尾形さんの口から短大での日常の断片が聞けたことは、牧野さんが居なければ決して叶わなかったことと思います。
ただ大好きなメンバーであるというだけでなく「憧れ」であるからこその肯定なのかなと、そんな風に感じました。
- 刹那の恋と永久の別れ
だんだんポエムになっていってますが気にしてはいけません
尾形さんにとって、同期の他の二人野中さんと羽賀さんとは、確かな特別な絆が存在しているでしょう。同期の中でも二人だけのオーディション合格組として、どんなときも共に歩んできた盟友の野中氏、自他共に認める親友のあかねちん。
そんな二人と違って、牧野さんが卒業後の尾形さんと会ったり、プライベートを共に過ごす姿は、はっきり言って全く想像できません。(12期で集まることはもしかしたらあるかもしれませんが)
住む世界の違う二人は、モーニング娘。というステージ以外では決して交わることが出来ないような、そんなイメージを抱いてしまうのです。
既に離れ、これから物語が積み上げられることは無いであろう二人ですが、最後にこんなエピソードを残しています。
6月19日日本武道館公演。
メンバー全員で歌う「卒業旅行~モーニング娘。旅立つ人に贈る唄~」の中で、12期4人がセンターステージに出て歌うパートがありました。
「よい仲間だ」という歌詞。
4人一列に並んでいたのですが、主役の尾形さんの両サイドはより絆の深い野中さん、羽賀さんの場所で、牧野さんは羽賀さんの隣というポジションでした。
だけど後ろのメンバーだけが見える位置で、羽賀さんの背中越しに
尾形さんと牧野さんの手が繋がれていたそうです。
牧野さんは「どちらから繋いだわけでもなく、手が触れて、自然につないだ」と語っています。
「どちらからともなく」自然に二人の想いが一つになったその一瞬。何も言葉は交わしていないでしょう。離れた後、その手の温もりもすぐに消えたでしょう。
そして翌日には尾形さんは卒業し、別々の路を往く。
最後に牧野さんが送った言葉「明日も嬉しいこと、楽しいこと、いっぱいあるといいね」は尾形さんにとってどんな祈りの言葉になったのでしょうか。
モーニング娘。だからこそ出会い、交わり、お互いの心に火を灯し、静かに離れていった。はるまきの二人は子供の頃、物語を読んで胸に宿した仄かな寂しさと切なさを思い起こさせてくれたのでした。
ここまで妄想にお付き合いいただきありがとうございました。
いろいろ書きましたが、単に二人の並びが美しくて好きだっただけかもしれません。
モーニング娘。の大人気カプ「だーさく」について語りたい
こんにちは。お久しぶりです。
突然ですが、モーニング娘。で一番人気のあるカプは何でしょう。
昨年までなら「まーどぅー(佐藤優樹×工藤遥)」という意見が大勢を占めたでしょうが、工藤さんの卒業があって現役メンバー同士のカプではなくなってしまいました。
今の人気カプというと、意見は分かれるでしょうが、この「だーさく(石田亜祐美×小田さくら)」を挙げるファンも多いと思います。
今回はそんな大人気カプだーさくの魅力に迫ります。
ざっくり二人はこんな子です。
石田亜祐美
10期メンバー 21歳
キレキレダンスと底なしのスタミナでグループを牽引するステージ番長。
真面目でストイックな面と、庶民的でどこかとぼけた雰囲気(だーいし感)を併せ持つ女の子です。リアクションが大きく感情表現が豪快で、グループのムードメイカー的存在でもあります。
11期メンバー 19歳
唯一の11期メンバーであり、圧倒的歌唱力を誇るモーニング娘。の歌姫。
歌やダンスのみならずメイクや見せ方等、自分磨きに余念のないプロフェッショナルです。現在のグループの中では数少ない常識人枠としてボケにボケを重ねるメンバーを一人でツッコむ役も担っています。
この組み合わせは「年上の先輩」と「年下の後輩」という、ごくごく普通の関係です。
-
「ビジネス不仲」という関係
だーさくの関係を説明する上でよく登場するワード「ビジネス不仲」
ざっくり言ってしまえば、別に仲が悪いわけじゃないけれど、表では仲が悪い風を装ってバチバチやる、という関係です。
これが面白くて「だーさく」が一躍人気を得ることになりました。
ファンだけにとどまらず、メンバーや事務所スタッフ、果ては外部コンテンツ(東スポ等)にまで浸透した「だーさく」は
モーニング娘。のキラーコンテンツの一つとまで言われています。
しかしこの関係は石田さんと小田さんが商売上手だから生み出されたというわけではありません。周囲に受けがいいことは勿論把握していますが、それを手放しで喜んでいるわけでもなかったりします。
本人たちはいたって真面目に、何年にもわたって「ビジネス不仲」を続けているのです。
この二人の関係では先輩の石田さんに常に主導権があります。(小田ちゃんが掌で転がしているように見えるときもありますが)
ビジネス不仲は、石田さんの不器用さゆえに生み出された関係なのです。
-
だーさくの歴史と変遷
- 初期の二人
現モーニング娘。の中でもお姉さん組(9期10期11期)は、5年以上ともに活動していますので、どの二人をピックアップしても深い絆や独特の関係性、歴史があります。
そしてだーさくにもまた、二人だけの歴史があるのです。
小田ちゃんは石田さんの1期下の後輩。つまり石田さんたち10期メンバーにとって初めての後輩にあたります。
小田ちゃんの加入前、初めての後輩を迎えるにあたって石田さんは凄く意気込んでいる風でした。自分がしてもらったように、分らないことだらけの後輩を優しく、時には厳しく導いてあげたい。
しかし蓋を開けてみれば11期メンバーはハロプロ研修生出身の小田さくらただ一人。
歌は抜群に上手いという触れ込みでしたし、ダンスもこなせる。器用さもあり経験もあることから何でも卒なくこなせる後輩でした。
小田ちゃんは加入するなり、パフォーマンスの中心メンバーの一角になり、グループにもあれよあれよと馴染んでいきました。
9期10期メンバーたちも、それぞれのスタンスで小田ちゃんと接し、生田、鈴木、佐藤といったメンバーはすぐに打ち解けて仲良くなっていきます。
石田さんは、小田ちゃんに関しては「出遅れた」組でした。
加入後1年以上経っても二人の間にコレというエピソードは無く、先輩として小田ちゃんに特別に何かをしてあげるということも、殆ど出来なかったようです。
しかし石田さんの中にはそれがずっと蟠っていたのでしょう。
随分後年になって「加入したばかりの小田ちゃんに何もしてあげられなかった」というニュアンスのことをポロっと口にしています。
- 変化の兆し
小田ちゃんの加入から1年以上が経過した2013年後半。すでに二つのツアーを共にこなした小田ちゃんと先輩メンバーとの間に壁は無く、石田さんもみんなといる場でならなんの気負いもなく会話できるくらいにはなっていました。
だけど、趣味嗜好や性格にも全く共通点がないこともあって相変わらず二人だけで絡むということはありませんでした。
ところで小田ちゃんは加入当初、独特の感性やふわふわとした言動、行動を見せることがたびたびあって、「小田イズム」などと呼ばれたりしていました。
ちょどこの頃、その「小田イズム」の処理の仕方として「小田イジリ」が(是非は微妙ですが)モーニング娘。の中で大流行します。「おい!小田!」がグループ内流行語になるほど。
この潮流に、飛びついたのが石田さんでした。
何とか小田ちゃんとの関わりを持ちたかった石田さんは、いち早く小田ちゃんに突っ込む「小田イジリ」の急先鋒という立場をゲットすることに成功します。
殆ど関わりが無いという現状と、激しいツッコミ、イジリが合わさって「不仲ネタ」の原型のようなものが出来上がりました。
- 二人で作り上げた「ビジネス不仲」
最初の頃は石田さんが一方的に小田ちゃんに強く当たり、それを小田ちゃんが苦笑しながら受け止めるというスタイルでした。
メンバーや、石田さんをよく知るファンにとっては「気になる子にちょっかいを出す中学生男子」的な微笑ましさがありましたが、見る人によっては先輩から後輩へのいじめのような印象を受けかねない危うさがありました。
実際それほど仲がいいわけでもないので、小田ちゃんへのフォローは他のメンバーに頼り切り。石田さんの独りよがりに終始してしまう危険性もありました。
そこで当の小田ちゃんが、包容力と器の大きさを発揮します。
石田さんが決して自分憎しできつく当たっているわけではない、自分となんとか関わりを持ちたくてとっかかりを探しているだけだと十分に理解していた小田ちゃんは、石田さんが一人で空回りしてしまわないよう手を打ちます。
それが、「反撃」でした。
当時の小田ちゃんは、とても先輩に噛みつくようなキャラでは無かったのですが、石田さんの意図を汲んで弄られたらイジリ返すという「反撃」を始めたことが、だーさくの関係を大いに発展させていきます。
小田ちゃんからの反撃が始まったとき、石田さんはそれはもう嬉しそうに、なお小田ちゃんに絡みに行くようになりました。
「不仲ネタ」が石田さんだけのものから、二人の共通のネタとなったことで、面白いように二人の関係は接近していきました。
「不仲」を軸にして会話をすすめられるし互いへのダメ出しなどもポンポンと口に出せる関係になったことで相互の理解が深まっていくという、普通とあべこべのような不思議な関係が深まっていきました。
お互いがやりあうようになってから石田さんの「小田イジリ」は見ていて安心できる「ネタ」に昇華され、むしろ前述の「中学生男子みたいな」石田さんの可愛さが浮き彫りになったり、小田ちゃんの包容力や対応力が称賛されたりと、相乗効果も生まれ始めました。
周囲にもその関係が受け入れられるようになり本人たちが「絶好調」と謳うまでになっていきます。
2014年~2016年頃までにかけて、まさにだーさく絶好調の嵐がモーニング娘。カプ界に吹き荒れました。
-
ラブラブデートin京都
そんな絶好調のだーさくが、まさにキラーコンテンツであることを内外に知らしめたのが、この「ラブラブデートin京都 ~さくらと一緒にサクラを見に行こう~」です。
これは何なのかというと、アップフロントグループのyoutube番組「Girls Night Out」(現在は終了)内で二人が京都を旅するという企画です。
第13回~15回まで異例の3週に渡って放送されただーさくロケ企画は大反響を呼びました。すべて公式動画として公開されていますので是非ご覧ください。
互いの信頼がうかがえる軽妙な不仲やり取り。その中にも普通に仲良くしたい願望や、素直になれないもどかしさがほんの少しだけ紛れ込んでいたり、
そんなお互いをまるごと許容し、愛おしんでいるような、絶妙すぎる二人の関係に
カプヲタは悶えに悶えました。
普通にロケ作品としてもよくできていて面白いこともあって、この動画は「Girls Night Out」シリーズで最高の再生回数を叩きだしてしまいました。
その反響ぶりに、番組の数あるロケ企画の中で唯一、後にDVDとして当人たちのオーディオコメンタリーつきで発売されています。
過去ハロプロの歴史を振り返ってみても、異例中の異例といえる出来事でした。
だーさくの魅力はこれを見れば一発でわかると言えるほど、だーさくファンにとってはマストアイテムとなっています。また京都の各所は、今でもだーさくファンによって聖地巡礼されているとか。
-
だーさくの現在
現在はさすがに21歳と19歳。「中学生男子」みたいな石田さんの苦肉の策で始まった「ビジネス不仲」は落ち着いています。
外縁を無理やり埋めることから始まった奇妙な二人の関係。しかしその絆は確実に深まっており、「一番考えや想いを共有できる相手」というまでに蜜月になっています。
すでにグループの中で先輩メンバー、またステージ上では歌、ダンスそれぞれのトップとしてパフォーマンスを引っ張る存在です。それでいて役職(リーダー、サブリーダー)を持たない中間の立場というのも、二人の共通点であり共有できる点でしょう。
だけどそれ以上に、この二人はグループに対してのスタンスに大きな共通点がある気がします。
この二人、グループ愛、モーニング娘。愛が特に強いと感じさせるメンバーでもあるのですが、「モーニング娘。が好きで入ってきたのでは無い」という意外な共通点があります。
石田さんは仙台のレッスンスタジオに貼られていたポスターを見て、漠然としたメジャーな芸能人への憧れからオーディションを受けたと言っています。
小田ちゃんはスマイレージ2期メンバーオーディションに落選したことを機に、ハロプロエッグに加入しました。
共に、ファンの立場でモーニング娘。に熱狂した経験を持っておらず、そのモーニング娘。愛はグループに加入してから育まれたものなのです。
そんな二人の中に大きな愛を芽生えさせたもの。一概には言えませんが「モーニング娘’14」と「道重さゆみ」の存在がかなり大きいように思えます。
二人がメンバーとしてのモーニング娘。との関わり方を語るとき、その視線の先に8代目リーダー道重さゆみさんの背中を感じることが少なくありません。
つまり、「グループに尽くし、貢献し、もてる全てを出し切って未来に繋げ、卒業する」という、リーダーになってからの道重さんが示した姿。それを理想としているのです。
モーニング娘。’14は一つの完成形であり、現メンバー、とりわけお姉さん組にとっては起点とも軸ともいえるチームでした。
今でも14に「モーニング娘。の理想の姿」を見るファンおり、石田さんと小田さんの中にも少なからずそれがあるのではないでしょうか。
ただ現在のモーニング娘。’18は、14とは全く形の違うチームです。
石田さんと小田さんたちにとって戦友といえる仲間たちが、次々と「道重さんとは違う形で」卒業していきました。
今二人が共有している想い。それが具体的に語られたことはありませんが、モーニング娘。の向かうべき道、理想の姿についてもしかしたら戸惑いを持っているかもしれません。
この度サブリーダーの飯窪さんの卒業も発表され、ますます石田さんと小田ちゃんのグループ内での立場は重要になっていきます。石田さんがサブリーダーに昇格、なんてことももしかしたらあるかもしれません。
9期の二人と共にこれからどんなモーニング娘。を作り上げていくのか。不器用ながらも全ての事柄に真摯に考えを尽くし、努力を怠らないだーさくの二人が、どんなモーニング娘。像を描いて進んでいくのか、とても楽しみです。
そしてだーさくの関係、妙な回り道をしながら築かれた絆が、今後どんな色を帯びて二人の中に紡がれていくのかも、本当に楽しみでなりません。
ちなみに「だーさく」の呼称は石田さんによって正式に否定されています。
曰く「おださくら」一人の略称として成立する呼称だから。
しかしながら誰も呼び方を改めようとはしていません。
それどころかリーダーの譜久村さんでさえ平然と「だーさく」と呼びます。
仕方ありません。だーさくはだーさくですから。
モーニング娘。が「この地球の平和を本気で願ってるんだよ!」を歌う凄さと意義についての話
こんにちは。
前回の記事が多くの方に読んでいただけたようで大変うれしく思っています。
かえれなちゃんの魅力についてもっと掘り下げた記事も書きたいですが
今回はこちらについて語ります。
略して「地平本願」
なんじゃそりゃ?と思う方もいるかもしれませんが、
モーニング娘。が2011年にリリースしたシングルのタイトルです。マジです。作詞作曲は我らがつんく♂さんです。
公式MVはカップリングの「彼と一緒にお店がしたい!」と繋がっています。
是非ご覧ください。
発表された当時、ファンも結構戸惑いました。
タイトルがなんというか、ストレート過ぎる…。チャリティーソングだってもうちょっと捻った、というかオシャレなタイトルつけるもんじゃない?
しかもこの曲が、大功労者6代目リーダー高橋愛さんの卒業シングルのA面ということもあり。キンキラキンの露出の高い衣装とか、全部がちぐはぐな印象を抱いたものでした。
結局「???」とはなりながらも、曲がかっこよくて出来がいいし、メンバーはみんな可愛いし、と普通に受け入れられていきました。
つんく♂さんの変な歌詞、変なタイトルには慣れっこになっていたというのもあります。
しかし改めてモーニング娘。歴代シングルの中の一曲としてこの曲を見た時、
私はこの曲につんく♂さんがモーニング娘。に求め、モーニング娘。でやろうとした「アイドル」の全てを見出してしまいました。
- そもそもアイドルってなんだっけ
アイドルは直訳すると「偶像」となります。
偶像とは宗教上の、目に見えない神様の代替として形あるものを崇拝の対象とする、その物のことです。
歌って踊る女の子男の子の芸能人を「アイドル」と呼ぶのは、ある種の宗教に近い感覚があるのだろうと感じます。
多分最初のアイドル的存在は「巫女」なのではないかと思います。
大衆の為に神に舞を捧げ、祝詞を読み、処女性をもって神聖さを保ち、神を宿すというあり方は
現在のアイドルの源流と思えます。
さらに辿れば人身御供、犠牲的死をもって神格化された少女たちまで行きつきそうですが割愛します。
巫女が舞いを捧げることで、五穀豊穣、太平、安全、平和を祈り、その祈る姿に大衆は安堵し感謝し憧憬を抱き熱狂もする。
それは「アイドルの歌から元気を貰い、日々の活力を得る」という感覚と、とても近いように思えるのです。
それが「アーティスト」「音楽家」としてだけに留まらない「アイドルの歌」の意義なのかなと思います。
- 「地平本願」はどういう歌?
タイトルが余りにもストレートで「クサい」ので、歌詞も高らかに世界平和を歌ったものになっているかというと全然違います。
主人公の女の子は日常の、家族のことや試験のことそして彼氏のこと、いろいろな小さな悩みに奔走しています。だけど「この地球の平和を本気で願ってる」のです。
大人になってからこの曲を聴いた私は、正直に言って鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けました。
なぜなら私自身幼い頃、両親から、あるいは学校で、戦争は悪い事で人は当たり前に助け合わなければならず差別や偏見は無くすべきことと習い、確かにその通りだと思いました。
あの頃の私はたしかに「この地球の平和を本気で願っていた」し、みんながそう願えば全てが上手くいって「この地球の平和」が実現できるものと思っていました。
だけど成長するにつれて、世の中そう単純には出来ていないことを知ります。
全てを白黒で分けることは出来ないし、二者間の対立にはどちらが悪いともいいとも言えないような場合がほとんどです。
優しさや愛情よりも、怒りや苛立ち、ヘイトが勝ってしまう経験が増えてくると
自分を含めた「人間」に対する信用も薄れてきます。
さらに生活していく上での身の回りのあれやこれや、学校の成績、人間関係、お金の問題、そんなことがリアリティを帯びていくと、世界のことなんて考えている余裕なんてなくなります。
「この地球の平和を本気で願ってる」なんて言えなくなってしまったのはいつくらいだろうか。多分私の場合、中学生くらいの時にはもう、ニヒルを気取ってた気がします。
だけど「地平本願」の女の子は、同じように色んな生活のあれやこれやに追われながらも、ちゃんと「この地球の平和を本気で願っている」のです。
その気持ちを無くさず未来に進むんだ、大人になるんだという決意表面のをするかのように、高らかに歌い上げています。
大人の皆さんは「この地球の平和を本気で願う」心をまだ持っていますか?
もう無い、なんて人でもきっと心の奥底にはその気持ちを持っていると思うのです。
- アイドル「モーニング娘。」が歌うことの意味
世界を良くしたい、世界平和を実現したい、そう思ったとしても、何をどうすればいいのかさっぱりわかりません。学者や政治家が頭をこねくり回してもなかなか正解にはたどり着けず相変わらず世界は混とんとしています。
現在の世界が着実に「平和」に向かっているのか、それとも「破滅」に向かっているのかさえ、神にしか分らないことでしょう。
だけど少なくとも「この地球の平和を本気で願っている」人が居なくなれば、未来永劫「この地球の平和」は訪れない。
だからせめて人々の心に「地平本願」の火が常に灯っていますように、そういう願いのこもった歌なのではないかと思います。
そしてモーニング娘。のメンバーたちは普通の女の子。だけどアイドルです。
アイドルが五穀豊穣、安全、そして平和の為に祈る巫女であるならば、この歌を高らかに歌うことこそその務めであるとすら思えます。
歌詞の中の女の子のように、彼女たちも日々の生活に追われているでしょう。世界平和と言ったって「政治的な正しさ」なんて考えもしないことでしょう。そもそも「祈り」には何の実効もありません。
それでもその歌声は広く人々の胸に届き、消えかけていた火をもう一度灯してくれるかもしれません。
「この地球の平和を本気で願っているんだよ!」はつんく♂さんが、彼女たちがアイドルだからこそ歌わせたかった、彼女たちの姿そのものを描き出した曲。そんな気がしてなりません。
近年、若い女性ファンも増えたモーニング娘。
彼女たちの中に「モーニング娘。は世界を守る戦士みたいなかっこよさがある」と評する人がいて妙に納得したのを覚えています。
別に何かと戦っているわけではないけれど、彼女たちは歌の力、パフォーマンスによって世界の平和を祈っている。みんなの心の平穏と安寧を、愛と希望が心から消えてしまわないことを祈っている、そう思わせられる瞬間が私にもあります。
「love&peas」を高らかに歌い上げる。それがアイドルの責務なのかもしれません。
おまけ
つんく♂さんの歌詞の世界観にはときどき、すごく仏教的な要素が盛り込まれていることがあります。
つんくさん自身が浄土真宗本願寺派の門徒でもありますし、色濃く影響を受けていることが見て取れます。
浄土真宗は日本でもトップクラスに信徒の多い宗派なのでご存知の方も多いと思います。「南無阿弥陀仏」の宗派です。
いったいどういう宗旨かというと、簡単に言ってしまえば
阿弥陀仏という仏さまが全ての人を救う為に祈ってくれてる。そして阿弥陀仏の祈りによって既にすべての人は救われている。だから感謝しましょう。
という話です。
釈迦と違って実際に阿弥陀仏なる人物はいませんし、もちろん概念ではあるのですが
この宗教における大事な部分は、我々衆生は日々の暮らしで精一杯だけれども
「すべての人を救う」というとてつもない願いを持つ存在がいる。ということが想像できる。そのとてつもない願いを前に自分の悩みや人生はとてもちっぽけなもの。だけど阿弥陀仏という存在を通して「全ての人間を救う願い」に触れることが出来る。
というようなことかと思います。
(※門徒の方、私の解釈が違ってたらごめんなさい)
すごくつんくさんの歌詞の世界観と合致すると思いませんか?私だけかな?
ちなみにこの曲の略称「地平本願」はファンが言い出したのですが、すごく響きが好きです。
意図したことではないと思いますが、「本願」は仏教用語で、阿弥陀仏がすべての人を救うという願いそのものを表す言葉です。
仏典に「地平本願」という四字熟語が載っていてもおかしくないようなマッチ具合だと思いませんか?
もし「地平本願」という漢詩が先にあって、それを和訳したのが「この地球の平和を本気で願ってるんだよ!」だったら最高にカッコイイな、とか。
井伏鱒二が「人生足別離」を「サヨナラだけが人生だ」と訳したようなロックを感じます。