ハロプロ・モーニング娘。の凄さとは「佐藤優樹がいる」ことである話
こんにちは。
今回はカプヲタ視点を排して、私が個人的にハロプロに感じている「凄さ」を語ってみようと思います。
佐藤優樹さんの魅力については、熱く100時間でも語れる多くの諸先輩方がいらっしゃるかと
思いますので、あえてここで掘り下げることは致しません。
ざっくり紹介すると、佐藤優樹さんはモーニング娘。の10期メンバーで現在20歳。
50人以上所属する現在のハロプロにおいて、数多くの指標で「人気ナンバー1」とも言われているメンバーです。
独特なアレンジや個性的な表現でステージを支配する圧倒的なカリスマ性と、私生活での不思議な言語感覚
独特の思考やセンスとのギャップは目に留めた人を一瞬で虜にする吸引力を持っています。
超・問題児
そんな佐藤さんが加入した当初から圧倒的カリスマ性を放つ風雲児であったかというと違います。
むしろ12歳でモーニング娘。に加入した彼女は当時、全く違う印象を持って周囲に受け止められていました。
均整のとれた美しい容姿を持っていたものの、完全に「子供」だった彼女は
普通の子供とも一線を画す(モーニング娘。的に)ド級の問題児でした。
同年代の子供に比べて常識的と思われることの殆どが通じない、知らない。
日本語が苦手で漢字が読めず、平仮名とカタカナの書き分けも不得手。
集団行動や社会生活で必要となる「我慢」のあれこれが身についておらず
奔放でつねに独特の感性や感覚によって行動する彼女は
なかなかに手に負えない女の子でした。
加入当初から「不思議ちゃん」を超えた不思議ちゃんエピソードは枚挙に暇が無く
OGの石川梨華さんは「往年の辻加護を超える問題児」と評しています。
そんな佐藤さんのファンからの評価はやはり「奇抜で面白い不思議ちゃん」で
過去に類を見ないそのキャラクターを面白がり、また素直すぎる子供らしさを愛でていました。
まーちゃんを「特別扱い」するということ
しかし実際に現場で関わっていた大人たちやメンバーの苦労は絶えないようでした。
もちろん本人も幼くして全く未知の環境に放り込まれ、同じ立場であるはずの同期ですら
「向こう側」の常識を共有しているという状況下での苦労は並大抵のことでは無かったでしょう。
孤独も理不尽さも戸惑いも大いに感じながらの活動であったことは容易に想像できます。
加入間もない頃、彼女を選出した張本人であるつんく♂さんが
とある番組にて数名の先輩メンバーにこんなことを言っています。
「(佐藤は)不思議ちゃんなんです。別格扱いしたってください」
これに対してスタジオでは「ずるい」という声が響きます。
この時の状況は当時はファンも気楽に受け止めていましたが
今から考えれば佐藤さんの未来を象る上で非常に大切な局面だったように思います。
10代の女の子、あるいは男の子の集団の中で
コミュニケーションにおけるズレが常にあり、トラブルメイカーとなっている佐藤さんを
「特別扱いしろ」と大人から言われて、素直にその通りして仲良くできるものでしょうか?
しかし結果として佐藤さんは「特別扱い」を受けながら後にカリスマへと成る道を歩むことになります。関係する大人たちは根気強く様々なことを彼女に教え、叱り、時に褒めてじっくりと成長を促しました。
メンバーや、特に同期の3人は時に衝突を繰り返しながら、忍耐強く佐藤さんと向き合い続けます。
佐藤さんの「特別扱い」は、例えば台本の漢字に振り仮名を振ってもらうといった実際的なことの他にも、心理的に「佐藤だから仕方ない」といった一人だけハードルの高さが違うという部分に大きかったように思います。
それは他のメンバー、特に同期3人にとっては大きなストレス、嫉妬の対象だったのでは無いでしょうか。
自分は当たり前にすべきことをしっかりやっている、それなのにそれが出来ていないまーちゃんが、他のちょっとしたことでちやほやされるという構図は10代の少年少女にとってどんな受け止められ方をするものか。
それでもメンバーも同期も、佐藤さんを「特別扱い」しながら根気強く育てるのです。
もちろん前述の嫌な部分以上に佐藤さんの素直な優しさや鋭敏な感性、瑞々しい感覚が愛されうるに足るものだったことも大きいでしょう。
また絶対的な「父」であるつんく♂さんに「特別扱いしてくれ」といわれたこともあるいはあったかもしれません。
だけど一番の理由となるのは、やはりモーニング娘。は歌とパフォーマンスを届けることを第一の目的とした集団であり、佐藤さんには間違いなくその才能が見え隠れしていたことではないでしょうか。
その独特で鋭敏な感性、音楽的に優れた嗅覚や、これまでにいなかった声質まで、佐藤さんの持つ才能はモーニング娘。の未来において必要なものだという意識。
そして連綿と受け継がれたグループであるからこその、「モーニング娘。主義」とでもいえるような滅私の精神が、個の感情的な部分で佐藤さんを見放すとかその才能を潰すことを誰一人善しとしなかった。
ゆえに彼女は大きな愛情をもって先輩や同期(や1期下の小田さん)に根気強く育てられることになったのです。
実際当時からメンバーたちは佐藤さんの突飛なエピソードを面白おかしく話す一方で
そのステージングや歌唱については大真面目に同じ土俵で語り合っていますし、彼女に対して敬意も示しています。
また普段優しい鞘師さんや小田さんは、佐藤さんがステージ上で不誠実さや勝手なふるまいを見せた際に、容赦なく厳しい言葉を投げかけています。
そのあたりからも徹底した「ステージ主義」が伺えますし、それはファンにまで共有されているハロプロ独特の感性かもしれません。
ともあれ「モーニング娘。のことを全く知らず」加入した佐藤さんが、9年目を迎えようとしている今、そのグループの歴史や携わった人々も丸ごと抱え、先輩や同期、はては後輩たちにまで大きな愛を注ぎ、それを口にする様は、裏を返せば彼女自身がそれだけ大きな愛に包まれてこの8年間のモーニング娘。生活を送って来たことを意味するのではないでしょうか。
隠されたまーちゃん
さて前述の番組でつんくさんは他にも、ある意味非常に有名な言葉を残しています。
曰く、佐藤さんが本領を発揮するのは「22歳やな」という発言です。
後に「女子かしまし物語」の歌詞にも採用されたこの言葉は印象的で
その歳が近づくことへの不思議な高揚すらもたらしてくれています。
実際にあの頃からは考えられなかったほどのカリスマへと成長したまーちゃんの22歳はいったいどんな風になるのか…
期待と希望しかない近い未来に胸を躍らせているファンは多いことでしょう。
だけどこの発言、何気に物凄い発言です。
なぜならアイドルというのは「若さ」が最大の資本といえるのに
「10年寝かせますよ」とでもいうような発言だからです。
私は決して芸能界やその関係に詳しいわけではありませんが
10代前半で表舞台で活躍することも普通で、同年代がようやく社会に出始める二十歳前後には「円熟」を迎えている
というようなアイドルの世界において、「育成」という概念は非常に不似合なもののように感じます。
もちろん純粋に「成長期」の女の子たちで、あらゆる事柄を吸収して大きく変化していくのがアイドルの魅力ではあるのでしょうが
運営側の視点に立てば、明日よりも若い今を出来る限り売らなければ意味が無い、「成長過程」はあくまで副産物なのではないでしょうか。
実際幼いころの佐藤さん、あるいは佐藤さんと同じく10期メンバーの工藤遥さんとのコンビ「まーどぅー」は、子供ならではの破天荒さ、突飛さとキャラクター、関係性の面白さもありファンに大変愛されていましたし、
「このコンビを地上波で売り出せばかつての『辻加護』のように世間を巻き込んだムーブメントも夢じゃない」
「それを仕掛けようとしない事務所は無能」などという言説も多くありました。
事実、「まーどぅー」が出演し出川哲郎さんと花やしきに出掛ける「ブラックバラエティー」の企画は大好評で、続く展開が大いに期待されましたが結局以後は何もありませんでした。
事務所は佐藤さんのその突飛なキャラクターを推し出して売ろうという気はさらさらなく
それどころか「いかに爪痕を残すか」が大事なバラエティー出演の際に佐藤さんには「一言も喋るな」とお達しが出るほどに彼女は「隠されて」いました。
この事実は当時のファンにとっては大きな不満でした。
だけど後年になって考えれば事務所の意向はあくまで歌手、ステージパフォーマーとしての「佐藤優樹」を育てたいのであって
その突飛なキャラクターや「不思議ちゃん」を切り売りして瞬間的な人気を得ることに意義を感じないというものだった。
それは前述のつんくさんの言葉とも併せれば納得させられます。
もともとアップフロントグループは演歌歌手が多く所属し、テレビなどでの活躍よりも「興行」を主戦場とする事務所でした。
モーニング娘。やハロプロの発足時はテレビ局や大手広告代理店と組んで大ブレイクを果たすという一種のバブルに沸きましたが
それが終息したあとは、やはり興行に重きを置き、あくまでコンサートを主体に組み立てる活動で、採算ラインの見極めに非常にシビア。
「石橋を叩いて渡らない」などと揶揄される博打嫌いの体質に戻っていきました。
そんな事務所が重要視するのはいつも「コンサート」と生の観客に届ける生の歌声、そして音楽的により高いものを常に目指すという「音楽事務所のプライド」でした。
奇抜なキャラクターの子役やお笑い芸人が一時的に大変なブームを巻き起こし
あっという間に忘れ去られるというのもよくあるお話です。
仕掛け方によっては佐藤さんや「まーどぅー」もそういう潮流に乗せようと思えばできたかもしれません。
だけどつんくさんを始めとしたアップフロントの大人たちは、あくまで歌手として佐藤さんを芸能界に引き入れ、責任もって歌手として育て上げるという考えのもと「バラエティでの緘口」を行ったのです。
10年かけて育てるという自信
さてこの「22やな」という発言は冗談めかして放たれてはいますが
その実かなり大きな自信に裏打ちされた「割とマジ」な発言だったと思われます。
というのもこの時期(2012年頃)は後にいうプラチナ期が終わりカラフル期が始動した時期。「再ブレイク」の狼煙が上がり始める時期でした。
その原動力は佐藤さんたち9期10期の若くフレッシュなパワーはもちろんですが、いわゆる「10年選手」たちの牽引力が大きかったのです。
モーニング娘。では高橋さんや新垣さん、道重さん、田中さん。
またベリーズ工房と℃-ute(いわゆるハロプロキッズ)も、「ただの子供」たちが
10年の時を経てアイドル界を牽引する重鎮となっていました。
中でも、新垣さんや道重さんといった加入時にはどうしようもない「落ちこぼれ」だったメンバーが
圧倒的なカリスマ性を放つメンバーへと変化したことは、事務所にこの上ない「育成への自信」を植え付けたのではないでしょうか。
若さの中で輝きを放ち彗星のように去っていくのがアイドルという考え方が主流という中で、10年かけて花開き、そこから伝説を刻み付けるアイドルというものが存在しうることに気付いたのがこの頃。
それはアップフロントだけでなくアイドルファン、ひいてはアイドル界全体の目から鱗を落とした「気付き」でした。
逆説的に言えば大真面目に10年かけて育てようと思っていたからこそ
佐藤優樹さんはモーニング娘。のメンバーに選ばれたのだといえます。
なぜならその突飛なキャラクターを売り出して消費しようという意図が無い以上、コミュニケーションが難しく大人の意図通りに動いてくれない制御不能な佐藤さんはその当時において使い道の難しい存在だったからです。
即戦力や最初から圧倒的なスターは勿論素晴らしい。
だけど今なかなか芽が出ず、人気も無くて若い時間が刻一刻減っていくというメンバーがいても、10年後に何か一つのモノを残し、ハロプロの歴史に刻まれていればそれでいい、というアップフロントとそのファンの価値観はアイドル界においてはなかなかに稀有であるように感じます。
というのも新垣里沙や道重さゆみの成功体験は、そうなるように仕向けたということは全くなくて、ハロプロというシステムの中で偶然にも本人たちの資質とうまく噛みあってそうなった、という類のものなので。
ただそういう「10年待つ余裕」は、ファンに様々なアイドルの楽しみ方を提案してくれたと同時に、事務所が焦らずじっくり育てる、ひいてはメンバーを大切に育てるということにも繋がっています。
それはファンにとってとても安心できることなのです。
今の佐藤優樹さんが見られるのはハロプロだけ!
さて、事務所にとって最初から「じっくり育てる」つもりで迎え入れた佐藤さん。
偶然そうなったのでは無いという意味で、育成メンバーとしての第一号といえるかもしれません。
そんな佐藤さんの現在の姿はまさに「育成の大成功例」といえるのではないでしょうか。
勿論、幼い頃から彼女には奇抜なキャラクターの隣に鋭い慧眼、深い思慮と洞察や優しさ、そして音楽的才能と数えきれない魅力がありました。
それをしっかりと見抜き、見出したつんくさんを始めとした当時のスタッフ。
そして何より、あの頃の魅力を失わず、カリスマ的な歌手、パフォーマーへと成長を遂げた本人。
メンバー、周囲の人たちにも感謝と賛辞を送らずにはおれません。
まだまだ、22歳まで、いやそれ以後もどんどん私たちをわくわくさせてくれるであろう
佐藤優樹さんのこれからが楽しみでしかたありません。
もし佐藤さんが、全く知らないにも関わらず門を叩いたのがハロプロ・モーニング娘。でなかったら
彼女は果たして今ほどの輝きを放つ芸能人になっていただろうか。
そんなところから逆算的に、私がハロプロを愛する理由を数え上げたりなどしているのです。